東京・神奈川・埼玉・千葉で131店を展開、 いなげやが挑む製配販連携・物流効率化|物流クロスオーバー【スーパーマーケット編】

インタビュー

SM物流研究会・チルド物流分科会で活動強化

SM物流研究会・チルド物流分科会で活動強化

連載インタビュー記事「物流クロスオーバー」

「物流企業と荷主業界の垣根をクロスオーバーして相互理解と問題解決を支援し、産業界全体の発展に寄与する」ことをパーパスに掲げた連載企画『物流クロスオーバー』。サプライチェーン先端の着荷主にフォーカスした「小売(SM)物流シリーズ」の第3回は、いなげやさんの登場です!
 同社は東京・神奈川・埼玉・千葉で131店を展開する、首都圏のスーパーマーケット(SM)チェーン。本シリーズで辿ってきた通り、スーパーマーケット業界では今、業界全体の物流効率化に向け、共同で製配販連携・物流課題解決に立ち向かう「SM物流研究会」が存在感を高めています。同社も2023年10月に同研究会に参加し、これまで手付かずだった荷受け分野の物流問題解決へのチャレンジを開始。喫緊の共通課題である「荷待ち・荷役作業等時間の短縮」に成果が生まれつつあります。
 今回は同社から商品戦略本部物流運営部長の齊藤記央氏をお招きし、この間の経緯や、さらなる在庫削減を目指すこれからの展望について伺っていきます。ぜひご一読下さい!
(インタビュー・企画構成/エルテックラボ 菊田一郎)

今回のゲスト 株式会社いなげや
執行役員 商品戦略本部
物流運営部長 齊藤 記央氏  株式会社いなげや

大八車、T型フォード…創業時から物流は一体

写真1 創業者・猿渡波蔵氏(左)、T型フォードと店舗(右)

写真1 創業者・猿渡波蔵氏(左)、T型フォードと店舗(右)

本日はよろしくお願いします。初めに、貴社と事業の歩みからお聞かせいただけますか?

齊藤氏 当社の創立は1900年で、今年でちょうど125周年になります。創業者の猿渡波蔵氏が「私は商人になる」と決意し、農家を出て商売を始めたのが、いなげやの原点です。創業者の自宅があった当時の立川は、甲武鉄道の駅がある一寒村に過ぎず、大八車で商品を運んで、周辺の町や村に塩干物の引き売りをしていました。そのうち扱う品種も増え、大八車では対応しきれなくなったことから、1900年、立川駅前に「稲毛屋魚店」を開店しました。1930年にはT型フォードを導入して、仕入れを行うようになりました(写真1)。

そうなんですか! T型フォードなんて当時は大変に珍しい、高価なものだったはずで、それだけ物流を重視されていたんですね。

齊藤氏 当社の事業は創業の時代から、物流と一体で歩んできたという歴史があります。1948年には株式会社稲毛屋を設立し、次第に業容を発展させていきます。やっと十数店舗になった段階の1973年のこと。当社は「100店舗構想」を掲げ、生鮮食品の集中加工・包装・値付け処理を行う生鮮センターと、グロサリーの一括納品・一括配送を行うドライセンターを開設しました。そこから本格的に物流体制を整えていきました。

写真2 コールドボックス(1976年~86年)

写真2 コールドボックス(1976年~86年)

それは日本の小売・スーパーマーケット業界の中でも、極めて早い時期の取り組みでは?

齊藤氏 そうですね。でも、まだ冷蔵車もない時代に、センターから店舗まで生鮮食品をどう安全に運ぶのかが大問題でした。そこで、「電気を使わない移動式冷蔵庫」となる<コールドボックス>を開発しました(写真2)。これは、温度の低いセンター内でコールドボックスの扉を開けて置き、内部を冷却。そこに、生鮮センターでトレイにパックした商品(センターパック)を入れ、安全にお店に運んでいました。物流上の画期的な発明だったと思います。

 ところが当時はまだ賞味期限記載義務がない時代で、センターパックの鮮度管理が困難でした。牛乳の製造年月日表示は1948年に義務化されましたが、賞味期限表示が義務化されたのは1985年のことです。そこで当社は1976年に日本で初めて、鮮度保証日の記載を開始しました。センターパック商品の鮮度を店舗で判断できるようにするためのもので、これによって「生鮮食品の稲毛屋」の評判が一気に高まり、チェーン展開も加速していきました。1988年には100店舗を達成しています。

VMI方式の弱点、在庫過多に立ち向かう

生鮮センターは、今で言うプロセスセンター(PC)だったわけですね?

齊藤氏 その通りです。初めは精肉から、鮮魚、日配とPC/TC(トランスファーセンター)を、次いで青果センターを作っていきました。2011年に立川青果生鮮TCにまとめ、2020年には移転新設しています。
 現在では131店舗体制になりました。エリアを東西に分け、西は東京・神奈川と埼玉西部まで含む立川エリアで104店舗、東は東京23区東部・埼玉東部から千葉までの千葉エリアに27店舗を展開しています。物流拠点は、立川エリアが入間惣菜センター、武蔵村山鮮魚PC/武蔵村山精肉PC、サンフードジャパン惣菜センター、昭島センター、昭島酒類センター、立川生鮮センター、立川青果センターの8か所。千葉エリアが千葉センター、千葉青果センター、八千代ドライセンター、習志野惣菜センターの4か所です。

図表3  社内説明資料――VMI方式

図表3  社内説明資料――VMI方式

齊藤さんが物流担当になられたのは、いつから?

齊藤氏 私はそれまで長らく仕入れを担当していましたが、2020年から物流担当になりました。当初は「2024年問題って何だ? 聞いたことはあるけどな…」ぐらいの認識でした。しかしそのうちに、「どうもこのままではまずいぞ」と気が付きました。
 そこでまず、社内で問題意識を共有しようと取り組みを始めました。まず理解してもらったのは、当社の物流拠点の在庫はVMI(Vendor Managed Inventory、納入業者在庫管理方式)によって、運営されていることです。当社の直接の取引先である卸企業が、出荷情報・販売計画・気温を考慮してメーカーから仕入れ、各拠点に在庫を持つ方式です。センター在庫は、店舗発注がかかるまでは卸企業の在庫(一部商品除く)です。このため、当社にとっては欠品防止・在庫負担軽減のメリットがあります(図表3)。

 ただしVMI方式にも弱点があり、それは「在庫過多」になりやすいこと。いわゆる「ブルウィップ効果」によって、店舗から卸、メーカーと発注が遡る過程で、実際の需要より発注数が膨張して現実と乖離したものになりがちなのです(図表4)。

図表4 社内説明資料――VMI方式の弱点【ブルウィップ効果】
図表4 社内説明資料――VMI方式の弱点【ブルウィップ効果】

VM I方式はいつ頃から始めておられたんですか?

齊藤氏 1995年からですね。今ではスーパーマーケット業界全体でもVMI方式が普通だと思います。この弱点の解決策として当社では、ドライ商品の「事前発注」の活用によって、在庫過多の防止を図ろうと考えています。

自ら運行管理者となり改革を推進

図表5 立川・昭島エリアの物流委託状況

図表5 立川・昭島エリアの物流委託状況

物流センター業務は基本、卸や3PLなどに委託されているのでしょうか?

齊藤氏 はい。たとえば当社の物流運営の中核拠点になる立川・昭島エリアでは、センター運営と店舗配送の委託をそれぞれ分けて運用しています。センター運営はご指摘の通り卸企業に委託していますが、店舗配送については当社が直接、それぞれ地場の配送会社6社に委託しています(図表5)。
 2024年問題と言っても、当初は「配送会社が何とかしてくれるのではないか」という空気も正直ありました。でも配送会社の社長さんたちと直接話し合ううち、当社が配送の現実をもっと理解する必要があると思い、自ら運行管理者の資格を取得しました。すると、荷主の立場からは見えなかった、2024年問題の深刻さと現場の実情に気づかされたのです。

スーパーマーケットの物流責任者が「運行管理者」に? それは非常に珍しいことですよね!?

齊藤氏 確かに、同業の中でもあまり例を聞きません。それでよく分かったのは、今まではトラックによる配送網が、取引先~センター~店舗という物流の過程で“クッション”のような役割を担っていたということです。配送時間も店舗の都合に合わせて運行ダイヤを設定していますが、センター側の都合と矛盾していても、配送車両が待機緩衝材となることで解決してくれていたわけです。
 それが、物流2024問題を契機に、“クッション”役のままの配送を放置していたら、業務の停滞、悪影響を与えてしまうと感じました。ドライバーさんの時間外労働時間・拘束時間を規制範囲に抑えるため、まず基本的な勤怠管理、安全管理を徹底することから始めました。運行管理者の立場からすれば、これからはドライバーさんに無理をさせられないのは明らかだったからです。私に続き社内でも運行管理者の有資格者を増やしていて、今は物流部内で4名が運行管理者の資格を保有しています。
 さらにもう1つ、問題がありました。店舗への配送だけでなく、店舗から排出される段ボール・ペットボトル等の資源物・廃棄物の回収便も、確保が厳しくなる状況は同じです。これは店舗配送とは別の収集運搬事業者にお願いしているのですが、当社の物流運営部は廃棄物回収物流の管理も担っています。これも業界であまり例がないようですが、今のままでは毎日回収をしてもらえなくなる可能性がある。だったらこの問題も先に対応しておこうと、取り組みを進めています。

配送便の削減、ダイヤ改正も実施

2024年問題回避のため、2025年4月にいよいよ一部施行された改正物流効率化法では、積載効率向上と共に荷待ち・荷役作業等時間の削減が荷主の重要義務に位置付けられました。労働時間削減と合わせ、具体的な対策はいかがでしょうか。

齊藤氏 下図は当社で調べた店舗配送ドライバーの勤務時間の推移です。2020年当時は15時間近い人も一定数あったので、①短時間のコースを組み合わせて車両削減、②長時間のコースを減車――などの対策を進めた結果、2023年には表のように減少し、現在ではさらに低下しています。

図表6 ドライバー勤務時間別構成グラフ(1週間)
図表6 ドライバー勤務時間別構成グラフ(1週間)

合わせて2020年に、配送ダイヤの改定を行いました。当社ではこれまで店のオペレーションに合わせて配送時間を決めていました。パートさんの出勤時間・人数などに合わせ、トラック便がそれに合わせる緩衝材の機能をしていたのです。
 でも今回は、配送側の都合を優先してダイヤを組み直しました。私は店舗の皆に「電車のダイヤって変えられないでしょ? 私たちはその時間に合わせて駅に行かなきゃならない。それと同じで、配送トラックは(オンデマンドで呼べる)タクシーじゃなくて、(ダイヤが決まった)電車なんです」と伝えて理解を求めました。当社の場合、それに対して1店舗たりとも反対することなく、納得してくれました。そう言うと同業他社の人に驚かれるのですが、これも先述した当社の歴史の中で、物流が大事だという文化が培われてきたからだと思います。

今までのやり方を変える物流改革は、まず「社内の反対」に合うことが多いと、私もいろんな物流リーダーから聞いています。それは素晴らしい企業風土だと感心します。

齊藤氏 これによって店舗配送距離と時間を下のように短縮することができました(図表7、8)。

図表7 ダイヤ改正の効果―店舗配送距離
図表7 ダイヤ改正の効果―店舗配送距離
図表8 ダイヤ改正の効果―店舗配送時間
図表8 ダイヤ改正の効果―店舗配送時間

配送便の改善について、前回話を聞いた平和堂さんでは、生鮮1便に商品量が集中するので、2便に移行して徐々に平準化を進めているとのことでした。

齊藤氏 ええ、積載率の高い生鮮1便の問題は各社共通ですね。当社も1便から2便にずらす、ないし2便を廃止する、メーカーからの直納品をセンター納品にする、などの改善を進めています。2022年から店舗配送ドライバーの拘束時間削減やインターバル確保、積載率向上、荷役作業の軽減を目指して、青果や惣菜の配送便の削減や見直しを進めてきました(図表9)。

図表9 曜日別・便別積載率の改善――積載率60%未満の改善を図る
図表9 曜日別・便別積載率の改善――積載率60%未満の改善を図る

SM物流研究会参加で荷待ち・荷役時間短縮

以上はセンターから店舗への配送(発)に係る物流改善でしたが、懸案の「荷待ち・荷役」に係る、取引先からセンターに届くときの荷受け(着)に関してはいかがでしょう?

齊藤氏 はい、当初の改善は自社内でできる範囲にとどまっていて、外部の取引先倉庫から当社センター間の部分にはなかなか踏み込めずにいました。そんな時にSM物流研究会(当時、「首都圏SM物流研究会」)の発足を報道で知り、「これはすごい!」と大きな衝撃を受けるとともに、強い関心を持ちました。それまで社内でも「2024年問題」について説明してきましたが、自社単位ではなく業界全体や社会全体でこの問題に向き合うきっかけとして、非常に大きな意義があると感じていました。
 当社も日本スーパーマーケット協会に加盟していたものの、発足当初の首都圏SM研究会は、日本スーパーマーケット協会の首都圏で営業している正副会長企業4社で構成されていたので、「当社は入れないのかな?」と思っていました。しかし他にも参加企業が増え始めたようだったので、サミットさんの武田物流マネージャー(当時)に話を聞きに行ったら、「参加可能」と伺いすぐにトップに報告し、2023年10月に正式に参加しました。

なるほど、それで話がつながりました。SM物流研究会の参加にはいくつかの条件がありましたが、いずれもクリアされていましたか?

齊藤氏 参加に先立って日本スーパーマーケット協会(SM物流研究会事務局)の加藤さんに来社いただき、研究会の趣旨や議事録を説明いただいた上で、社内整備を進めました。参加にあたっては「持続可能な食品物流に向けた取り組み宣言」(加工食品における定番商品の発注時間の見直し、特売品・新商品における発注・納品リードタイムの確保、納品期限の緩和(1/2ルールの採用)、流通BMSによる業務効率化)、「バース予約システムの導入」、「パレット納品の推奨」、「トップコミットメント」の取り組みが必要とされていました。
※上記、7つの取り組みが求められており、参加時の「トップコミットメント」は必須となります。その他は実施予定があることを最低限の条件としています。
 まず当社のトップからは、「2024年問題を始めとした物流の課題は小売業界に限らず国内の産業全体にとって大きな課題。SM物流研究会(当時、「首都圏SM物流研究会」)の主旨に賛同し参加をさせていただき、業界全体の発展と持続可能な社会実現に向けてありたい姿を共有し、よりよき物流体制の実現に取り組む」というメッセージが発信されました。これを受け、宣言等の各項目について確認と対応の準備を進めました(図表10)。

図表10 首都圏SM物流研究会の入会条件と入会時の進捗状況
図表10 首都圏SM物流研究会の入会条件と入会時の進捗状況

上記の①②については既に社内で実施済みでしたが、③④については参加後に本格的に着手しました。③は店舗・商品部と協議を重ねながら進め、④についてはシステム改修や店舗作業の変更が伴うため、やや時間がかかりましたが、2024年8月から稼働しています。
入会当初は、「当社は他社より遅れているのではないか、大丈夫だろうか?」という緊張感もありましたが、活動に参加してみたらとてもフラットに話し合え、「困っていることはみんな一緒なんだ」と実感できました。当社はちょうど10社目の加盟企業でしたが、話を聞いて私自身が一番感銘したのが、「物流を競争領域ではなく協力領域と捉え、サプライチェーン全体の効率化を目指す」という研究会の方針です。「まったくその通りだ!」と心から共感しました。
 一方で、業界全体の大きな潮流を把握する中で、個社単位で抱えていた危機感以上に、物流を取り巻く環境が厳しいことも再認識しました。

研究会で学び合う中で、「荷待ち・荷役時間短縮」等の取り組みを開始されたのですね?

齊藤 はい、会員各社の成功事例を共有させてもらえたのは非常に参考になりました。「荷待ち・荷役作業等時間 2時間以内」の目標に対し、まず昭島ドライセンターで調べたところ、荷待ち+荷役作業等時間が2時間を超えたのが48.6%という結果でした。これではダメだと、2024年4月にバース予約システムを導入しました。ところが、センターの構造上の制約(待機場所と荷降ろし場所の距離、入荷バースの少なさ等)もあり、なかなか改善が進みませんでした。
 そんな時、研究会の会議でサミットさんの成功事例を聞き、「バースの予約率向上がカギ」だと教えてもらいました。当社でもベンダー会議で卸の取引先様に予約システム導入を説明し、予約を呼びかけていましたが、元請け・孫請け・ひ孫請け……と何重にも重なる配送会社の委託構造の影響もあり、なかなか実運送を担う現場ドライバーまで情報が伝わらず、予約率が低迷していました。予約システムは、ただ導入するだけでは効果が得られないことがよく分かりました。こうした中、サミットさんに伺った成功事例の中で、「周知を頑張れば、ある日突然、予約率は跳ね上がる」とのアドバイスをいただきました。そこで、当社では2024年9月、実際にドライバーや配送会社に向けてビラを配布するなど、周知活動を強化した結果、予約率はポンと70%超に上がり、間もなく80%を超えました。これに伴い、荷待ち・荷役の2時間超過も大きく減少しました。今後はこれを早急に90%台へとさらに引き上げたいと考えています(図表11)。

図表11 昭島ドライセンターでの荷待ち・荷役時間の推移
図表11 昭島ドライセンターでの荷待ち・荷役時間の推移

私も、「バース予約を入れたのに、ちっとも予約率が上がらず効果が出ない」という倉庫会社さんのボヤキをよく聞きますが、周知徹底の努力次第なんですね。

齊藤氏 そうです。でもまだ残る課題があります。それは①パレット納品の継続交渉と、②パレット納品化に伴うバース回転率の向上です。荷役作業等時間の短縮のカギであるパレット化はメーカーさん次第の部分がある一方、自分たちでできる回転率の向上策として、検品作業を速める取り組みを始めました。
 調べてみると、明らかに、常に飛び抜けて作業の早い人(Sさん)がいたのです。バーコードを読んでから個数を数えるのですが、Sさんはこの商品ならパレット1段に何個積まれているか、記憶しているから速いのです。そこで遅い人や新人さん、委託先のメンバーも含めて、Sさんのやり方を教育することにしました。
 当社のセンターの場合、パレット品はセンター側の作業者がフォークリフトで荷下ろしし、バラ積み品はドライバーに下ろしてもらっています。メイン拠点の昭島ドライセンターの場合、当初のバース回転率は0.8回転/時くらいでしたが、現状は1.2回転。これを2回転まで上げることを目標にしています(図表12)。当社の拠点全体を見ると、千葉エリアのセンターは3~4回転しているところもありますが、これは取扱量の違いが大きいかと思います。

図表12 荷待ち・荷役時間の削減目標

図表12 荷待ち・荷役時間の削減目標

2回転なら、荷役時間は30分。荷待ち時間によっては第1ステップの「荷待ち+荷役作業等時間 2時間以内」、荷待ちも30分以内にできれば第2ステップの「1時間以内」も視野に入りますね。

 

「チルド物流分科会」の活動を開始

さて、その他のSM物流研究会での活動についてはどうでしょう?

齊藤氏 研究会では2024年4月から、4つの分科会(「パレット納品」、「共同配送」、「生鮮物流」、「チルド物流」)の取り組みを開始しました。当社はチルド物流分科会に参加し、ヤオコーさん、エコスグループさんと3社で活動しています。24年度はまず初めに、運送事業者様や卸様のヒアリング会を実施しました。チルド物流全体では範囲が広すぎて一度に対応できないため、対象カテゴリーを「加工肉と日配品」に絞り込んで進めています。

 チルド物流にはリードタイムが短く、配送頻度も高いのにパレチゼーション(標準化)は進んでいない、など多くの課題があります。またドライ(常温)物流と違って、企業やセンターごとに運用方法がバラバラで、共通のルールを作るのがとても難しい。多くのドライ品(加工食品、菓子、乾麺など)にはそれぞれ業界団体があり、議論をまとめていますが、チルドにそうした団体はなく、情報共有の難しさから個別対応が多いのが現状です。
 分科会の3社での会議は各社のチルド物流センターに集まって打合せを行い、センター運用の違いや共通点を確認しながら進めています。ヒアリングしたドライバーの“困りごと”に対応するところから始めようと調べたら、多くに共通していたのが、センターの概要や窓口がどこかが分からない、という点でした。新しいドライバーは前任者から口頭で聞くか、手書きメモをもらうくらいなので、構内の走行は時計回りなのか、逆回りなのかも分からず困っていたのです。
 そこで、3社の各チルドセンター情報の登録を始め、バース予約システムのアプリ機能を使って、ドライバーがスマホでそうした情報を見られるようにしました。

なるほど、それは便利ですね! チルド物流に限らず展開したいところです。

齊藤氏 そんなさなかの2024年10月、チルド食品メーカー9社が、持続可能なチルド食品物流の実現を目指して「チルド物流研究会」を発足させました。さっそく当分科会の3社で連携し、「チルド物流研究会」と協議を開始しています。
 この枠組みでは2025年度の課題として、「チルド食品業界 製配販行動指針」(仮称)の策定に向けた準備を進めています。たたき台を作って議論しているところですが、当分科会でまとめた内容をSM物流研究会全体で議論・調整し、業界全体の改革へとつなげていきたい。チルドの取引先は多岐に渡るため、調整には時間がかかりますが、業界の持続的な成長のため、引き続き各社と連携し取り組んでいきたいと思っています。

リードタイム延長、在庫削減にも取り組む

残る課題として、リードタイム延長への取り組み状況もぜひ、お聞きしたいです。

齊藤氏 「チルド物流研究会」からはリードタイム延長にはどんなメリットがあるのか、説明いただきました。リードタイム延長により、より計画的な出荷・配車手配が可能となります。結果、共同配送による積載率が向上して、車両台数が減り、持続可能な物流体制が構築出来るとの説明でした。説明を聞いて、チルド分科会としては、発荷主・受荷主・物流の三方よしで様々なメリットが期待できると思いました。
 研究会で調べたところ、主に首都圏に店舗展開しているSM各社はほぼLT1(リードワン)、当社と同じく翌日納品のようです。発注したら翌日届きますが、大体は夜に納品が来ます。しかし、LT2(リードツー)の翌々日納品にして、センターの夜間作業をなくすという選択肢はあります。また共配を含めた積載率向上で車両数を削減し、車両待機時間の削減につながればメリットはあるでしょう。

なるほど。では最後に部長ご自身が、この2025年度に注力したいとお考えの課題が他にあれば、聞かせてください。

齊藤氏 1つは在庫削減ですね。前述の通りセンターの在庫は発注するまで当社の在庫ではないと言っても、ムダな在庫が多ければ、作業効率も保管効率も、データ効率もピッキング効率も、配送効率も、すべてが悪くなります。今まで在庫にあまりメスを入れてこなかったので、今年は在庫圧縮に焦点を当てたいと思っています。

その一手としてアイテムの絞り込みもお考えですか?

齊藤氏 もちろん関係しますが、それは私の業務範疇を超えるので、他の部署とも連携しながら進め、売場の在庫圧縮も図りたいですね。一方、これまで複数の拠点に分散していたセンター在庫のスロームーブ品を1か所に集約する取り組みを2023年11月から始めました。これにより生じた空きスペースに、従来メーカーから店舗に直納していた商品の在庫をセンターに置くことで、店舗の受け入れ作業の軽減などに効果を挙げています。

そうなんですね。お話を聞き、いなげやさんの場合は創業時からの「物流一体」の風土を生かして鋭意、物流改革を進めておられることがよく分かりました。計画が順調に進展し、製配販の連携と物流で働く人の環境改善を通じて、物流の持続可能化に寄与されることを期待しています。本日はありがとうございました! 

 

執筆者 菊田 一郎 氏 ご紹介

執筆者 菊田 一郎 氏 ご紹介
L-Tech Lab(エルテックラボ)代表、物流ジャーナリスト

㈱大田花き 社外取締役、流通経済大学 非常勤講師、ハコベル㈱ 顧問

1982年、名古屋大学経済学部卒業。物流専門出版社に37年勤務し月刊誌編集長、代表取締役社長、関連団体理事等を兼務歴任。2020年6月に独立し現職。物流、サプライチェーン・ロジスティクス分野のデジタル化・自動化、SDGs/ESG対応等のテーマにフォーカスした著述、取材、講演、アドバイザリー業務等を展開中。17年6月より㈱大田花き 社外取締役、20年6月より㈱日本海事新聞社 顧問(20年6月~23年5月)、同年後期より流通経済大学非常勤講師。21年1月よりハコベル㈱顧問。

著書に「先進事例に学ぶ ロジスティクスが会社を変える」(白桃書房、共著)、ビジネス・キャリア検定試験標準テキスト「ロジスティクス・オペレーション3級」(中央職業能力開発協会、11年・17年改訂版、共著)など。

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ロジスクエアふじみ野C

ロジスクエアふじみ野C
ロジスクエアふじみ野C(全景イメージ)

ロジスクエアふじみ野C棟は、埼玉県ふじみ野市にて開発予定のBTS型物件です。
ふじみ野市は埼玉県の南部に位置しており、都心部へのアクセスにも優れ、物流拠点立地として県内でも有数のニーズの高いエリアです。開発予定地は道路ネットワークの活用により広域物流拠点立地としても優位性を備えています。

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