EC物流倉庫とは?倉庫選定における選び方のポイントも解説

CREコラム

EC物流倉庫とは?倉庫選定における選び方のポイントも解説

EC物流倉庫とは、ネット通販(EC)における商品の保管、在庫管理、梱包、出荷などの物流業務を担う倉庫です。EC市場は急速に拡大し、消費者の「すぐ届く」「間違いなく届く」といった期待はすでに標準となっています。こうした中で、配送のスピードや正確性は企業の競争力を左右する要素となっており、効率的に運営された物流倉庫の存在は事業成長に欠かせません。

本記事では、物流分野に強みを持つシーアールイーが、EC物流倉庫の役割や特徴、さらに倉庫選定の際に押さえるべきポイントを順を追って解説します。

EC物流倉庫とは

EC物流倉庫とは、EC事業における商品の入荷、保管、流通加工、出荷、配送までの一連の物流プロセスを担う施設のことです。
一般的な保管目的の倉庫とは異なり、単にモノを置いておく場所ではなく、消費者への最終的なサービス品質を左右する「販売の一部」として機能します。具体的には、以下のような業務を内包します。

・入荷、検品:仕入れ先やメーカーから届いた商品を受け取り、数量や品質を確認
・保管、在庫管理:多品種・小ロットの商品を効率的に保管し、リアルタイムで在庫数を把握
・流通加工:セット組み、ラッピング、同梱チラシの封入など、販売促進を目的とした付加作業
・出荷、配送:注文データに基づきピッキング・梱包・ラベル貼付を行い、配送業者へ引き渡し

EC物流市場の現状

国内のEC市場は年々拡大を続けており、2023年のBtoC-EC市場規模は24.8兆円(前年比9.23%増)に達しました。EC化率も9.38%と上昇傾向にあり、オンライン購買が日常的な行動として定着していることがうかがえます。こうした市場拡大に伴い、出荷量や配送件数も増加しており、2023年度の宅配便取扱個数は約50億733万個と過去最高を記録しました。取扱件数の増加は、倉庫における入出荷処理の迅速化や在庫管理の精度向上を一層求める結果となり、効率的なオペレーションを支える物流倉庫の重要性が高まっています。すなわち、EC物流倉庫は単なる保管施設ではなく、出荷スピードや品質を左右する「EC事業の中核インフラ」としての役割を担っています。

EC物流倉庫の特徴

多品種小ロットの在庫管理が必要

EC物流では、1注文あたりの出荷数量が少なく、SKU(品目数)が多いのが特徴です。顧客の様々なニーズに対応するために、ロングテール品等少量ずつでも多品種の在庫を抱える必要があり、在庫管理の業務が煩雑になりがちです。このため、在庫データの精度やWMSの整備は重要であり、在庫の可視化ができていないと欠品や過剰在庫による損失を招きます。

スピーディーな業務が求められる

ECサイト利用者の多くは、注文した商品が「早く届くこと」を強く期待しています。
こうした消費者ニーズに応えるため、大手ECモールでは配送スピードを重視したサービスを展開しています。たとえば、楽天市場の「あす楽」(正午までの注文で翌日配送)、Yahoo!ショッピングの「優良配送」、Amazonプライム会員向けの配送特典などが代表的です。これらのサービスは、迅速かつ安定した出荷体制を前提としており、ECサイト利用者の「早く届いてほしい」という期待に応えるためには、、EC物流倉庫におけるスピーディーで正確な業務運用が欠かせません。

品質の高さと付加価値対応が求められる

EC物流倉庫には、単に商品を正確に出荷するだけでなく、顧客満足度を高めるための細やかな配慮が求められます。通常業務の品質の高さはもちろん、顧客一人ひとりに寄り添った対応や、ブランド体験を演出する工夫も重要です。

たとえば、多くのEC事業者は、発送時に新商品のチラシやキャンペーン案内、試供品、カタログなどを同梱するほか、購入金額や会員ランクに応じてノベルティを変えるなど、マーケティング施策と物流を連動させています。
完全栄養食を展開するベースフード株式会社では、自社ECの定期購入者に対して、開発者の声やユーザーインタビュー、自社商品のレシピを掲載した「BASE FOOD JOURNAL」を同梱。こうしたブランドブックの送付により、ユーザーとの関係性を深め、ファン化を促進しています。
このように、EC物流倉庫は商品を保管・出荷するだけでなく、ブランド価値を高める「顧客接点」を作り出す役割も担っているのが特徴です。

EC物流倉庫の倉庫選定における7つのポイント

EC物流における倉庫選定では、立地条件が事業の収益性やサービス品質に直結します。配送リードタイムの短縮や輸送コストの削減、繁忙期の対応力など、立地によって左右される要素は多岐にわたります。効率的な物流ネットワークを構築し、安定した出荷体制を維持するためには、拠点の場所選びが極めて重要です。ここでは、倉庫選定における7つの重要なポイントを解説します。

①仕入地・需要地との輸送距離

倉庫の立地は、仕入れ先や配送の拠点となる運送会社や需要地からの距離が短い方が輸送コストやリードタイムを削減できます。特にEC業界では、当日配送などの迅速な配送が求められ、注文締め切りから出荷として配送事業者への引渡しまでの時間も短くなりがちであるため、主要な輸送路へのアクセスが良好な立地を選ぶことがポイントです。

②労働力の確保の容易さ仕入地・需要地との輸送距離

EC物流倉庫の運営において人材の確保は重要な要素です。近年、人手不足を受けて省人化機器の導入は進んでおりますがEC物流では入荷も出荷もバラ品として取り扱うことが多く、ユーザーへのサービス内容も多様化しているため人による作業はまだまだ多い領域といえます。

そのため、周辺施設や交通インフラ状況、競合施設の存在などを確認し、労働力の確保が容易なエリアを選ぶことが望ましいです。倉庫の場所、最寄りの鉄道沿線の環境によって通勤可能エリアも異なり、労働力の確保に影響が生じます。

競合施設が隣接するエリアは労働力の獲得競争が激しいため、もしそのエリアに拠点を開設する場合には、賃金や福利厚生の充実、柔軟な勤務形態の導入など、より魅力的な労働条件を提示することが必要なことも考慮しましょう。

③施設内導線

施設内の動線設計は、物流倉庫の運営効率を左右する重要な要素です。効率的な動線設計により、作業時間の短縮と作業品質の向上が実現できます。具体的には、入口から庫内、休憩室へのアクセスのしやすさを考慮し、作業者の移動距離を最小限に抑える必要があります。安全やセキュリティ体制、またそのためにかかる人件費も考慮に入れるとよいでしょう。

このような効率的な動線設計によって、作業者の不要な移動を減らし、疲労を軽減することができます。結果として、作業効率の向上だけでなく、作業品質の維持向上にもつながり、施設全体の生産性向上に寄与します。

④周辺道路環境の把握

倉庫選定では、建物の内部だけでなく、外部の道路環境もチェックする必要があります。主要な輸送路へのアクセスが良い立地であっても、倉庫の前の道が細かったり、輸送方面への道に出にくかったりする場合、トラックの出入りに無駄な時間が発生してしまいます。

倉庫を見学する際には倉庫の施設設計の条件と共に周辺道路環境にも着目することが重要です。

⑤運営する物流形態に応じた倉庫区画の選定

EC物流では、事業の特性に応じて、保管を重視する倉庫と通過を重視する倉庫の2つのタイプがあります。保管系であれば奥行きが深い倉庫でも効率に支障が出にくい一方、通過系の倉庫では短時間で商品を搬入・出荷するため、広い動線が確保されている方が望ましいです。

たとえば、食品や日用品など回転率の高い商品を扱う場合は、入荷から出荷までのスピードが重要となるため、十分な作業スペースを確保できる倉庫が効率的な倉庫運営につながります。また、大手EC企業では、商品の特性や出荷頻度に応じて異なるタイプの倉庫を使い分けることで、効率的な物流オペレーションを実現しています。運営する物流形態や物量の成長性も考慮し、最適な倉庫区画を選定しましょう。

また、トラックの着車スペースにも目を向けるとよいでしょう。事業の特性として倉庫を出入りするトラックが日に何台であるのか、同じ時間帯での着車台数は?など倉庫作業とトラックの発着を合わせるための適切なレイアウトやバランスにも注意する必要があります。

⑥BCP対策における周辺環境と建物構造の把握

⑥BCP対策における周辺環境と建物構造の把握

災害発生時、倉庫運営の早期復旧は、事業継続に不可欠です。そのため、周辺環境の把握と地震対策は非常に重要です。

倉庫周辺のハザードマップを詳細に確認し、地震、風水害、土砂災害など、考えられるリスクを具体的に把握しましょう。過去の災害履歴も調査し、地域の特性を理解することが重要です。

⑦コスト最適化と将来性の考慮

EC物流における倉庫選定では、立地条件や労働力の確保、施設の効率性、コスト、将来の拡張性などを多面的に検討することが重要です。 自社のビジネスモデルや成長段階に合った倉庫を選ぶことが、顧客満足度の向上と事業の持続的な発展につながります。
こうした検討を進めるにあたっては、市場にどのような物件が出ているのかを把握することも有効です。「CRE倉庫検索」では、日本各地の貸し倉庫情報を掲載しており、条件整理や初期検討の参考としてご活用いただけます。

以下では、直近で募集が開始された過去3日間の新着物件を一覧で掲載しています。倉庫選定を検討する際の一助としてご参照ください。

エリア別の募集中物件

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