流通加工とは?種類や課題と対策を解説
流通加工とは、生産・物流・販売の過程で商品の付加価値を高めるために行われる多様な作業の総称です。流通加工には、繁忙期の人材不足や多品種化による工程管理の複雑さなど、運用上の課題も少なくありません。これらの課題を克服し、安定した品質と効率を維持するには、どのような対策が必要でしょうか。
本記事では、物流分野に強みを持つシーアールイーが流通加工の基本的な概要から具体的な事例、課題と解決策を独自の切り口でわかりやすく解説します。
流通加工とは
流通加工とは、生産・物流・販売の過程で商品の付加価値を高めるために手を加える作業全般を指します。流通加工の具体例としては、包装、値札・タグの取り付け、複数アイテムのセット組みやおまけ付け、ラベル貼付など多岐にわたります。
流通加工の目的
流通加工の目的は、顧客の作業負担の軽減や商品の品質・付加価値をさらに高めることにあります。
商品の付加価値の向上
流通加工を行うことで、商品の価値を高め、顧客にとってより魅力的な商品を届けることが目的のひとつです。商品価値を高めることで、類似商品と差別化できるだけでなく、ブランド力の向上にも繋がります。特に高単価商品や限定品では、独自の包装や特別仕様の加工が効果を発揮します。
また、個別に販売されていた場合には見逃されがちなアイテムも、セット販売やラッピング済みの商品として提供することで付加価値が加わり、顧客にとって購入しやすい形になります。
顧客の作業負担の軽減
流通加工を通じて商品の完成度を高めることで、購入後に必要とされる顧客の手間を軽減する効果があります。
例えば、商品を小売店に出荷する際には、野菜のカットや皮むきなどの加工を施した商品を納品することで、売り場の作業の手間も省かれます。
商品をあらかじめ顧客が利用しやすい状態に加工しておくことで、顧客の負担を減らし、購入意欲を高めると同時に、顧客満足度の向上にもつながります。
流通加工の種類
流通加工には多くの工程が含まれますが、主に「生産加工」と「販促加工」の2つに大別できます。以下では、それぞれの工程と作業について詳しく解説します。

生産加工
生産加工とは、材料や部品を加工し、直接商品に手を加える工程を指します。
具体的には、「商品を切り分ける」「組み立てる」といった作業が含まれます。部品の組み立てや部材の調整を生産段階で行うことで、最終製品の品質を向上させ、納品時の検品や調整といった工程を簡略化できます。
また、生産加工は、工場の中で製造段階の商品に対して行われる場合が多いです。例として、生産加工には次のような作業が含まれます。
カット加工
材料を一定のサイズや個数に分ける作業のことを指します。「カット」や「カッティング」とも呼ばれており、金属(鉄鋼など)、食品類、木材、布や絹などの繊維などの商品が対象になります。スーパーで販売されているカット野菜や、調理のしやすさを考慮してスライスされたお肉などがその例です。
プレス加工
プレス加工は、商品のシワ取りや型押し、曲面加工などを行うことで、商品をより美しく、かつ機能的に仕上げる方法です。とりわけ繊維製品にとっては、シワ取りプレスが欠かせない工程であり、店頭に並ぶ際の見栄えにも大きく関わります。
素材や目的に合わせた適切なプレス加工を行うことで、品質保持とブランド価値の向上を同時に実現できます。特に、アパレルECにおいて行われることが多い加工の一つです。
包装・梱包
包装・梱包は、商品の保護とプレゼンテーションを同時に実現する基本的な加工です。
商品が輸送途中で傷つかないよう、エアパッキンなどの保護材を使用したり、見た目にこだわったオリジナルパッケージを採用したりします。これにより、顧客の手に渡った後のクレームを減らすだけでなく、ブランドイメージを高めることが可能です。
タグ付け
値札やタグをつける作業は、小売現場での実務効率を高め、商品の情報を消費者に分かりやすく伝える重要なプロセスです。
適切な価格情報やブランド名を表示することで、販売スタッフの手間を削減しつつ、購買意欲を喚起しやすくなります。さらに、在庫管理にバーコードやQRコードを活用すれば、流通や棚卸の精度も飛躍的に向上します。
また、同じアイテムでも、卸先のオリジナルタグをつける等の作業が物流センター内で発生する場合があります。
販促加工
販促加工とは、物流センターや小売店の中などで商品の販売を促進し、商品価値を高める目的で行われます。
具体的には、ブランドロゴの取り付けやギフト需要を想定したラッピングの実施など、販売促進に直結する作業が該当します。販促加工は、顧客の属性やニーズに対応してカスタマイズされることが多く、販売戦略の一環としても重要な工程です。
ギフトラッピング
ギフトラッピングや特別包装は、プレゼント用途の際に求められるサービスで、商品の雰囲気を決定づける重要な要素です。
出荷時に商品タグを取り、ラッピングを行います。華やかさや高級感を演出することで、渡す側・受け取る側双方の満足度を高められます。こうした加工は、ブランドイメージの向上にも直結するため、クリスマスや母の日などカレンダー上のイベントではギフトラッピングの需要は特に高まります。
セット組み・セットばらし
セット組みとは、複数の商品を組み合わせ1つの商品にする工程で、販売促進を目的に行われます。キャンペーン用のセット商品を作ったり、ギフト用に複数商品をパッケージングすることで、客単価の向上にも寄与します。例としては、アパレルブランドの年末年始福袋があげられます。
セットばらしとは、セット組みとは反対に組まれていたセット品をばらし、セットを構成していた商品を単品管理・販売にするための作業を指します。
ECにおいては単品、セットの両方で販売する商品で実施するケースが多く、商品の販売・在庫状況によって調整を行うことで販売機会損失の防止と在庫の効率化を目的としています。
流通加工の課題とその対策
流通加工はメリットが多い一方で、対応する商品ジャンルが増えるほど工程管理が複雑化しやすい点が課題です。高品質を維持しながらコストを抑えるためには、作業の可視化や標準化、そして適切なアウトソーシングの活用など多面的なアプローチが求められます。
作業工程の複雑さ
流通加工を行うほど、作業手順は多岐にわたります。工程が増えると管理が煩雑になり、ミスや手戻りの原因となることも少なくありません。こうしたリスクを低減するには、管理システムの導入やチェックリストの作成など、作業フローを標準化・自動化する取り組みが重要です。
人材不足
流通加工を担う人材には、手先の器用さや精密な作業を行う能力が求められるケースも多いです。
しかし、人材の採用や教育には時間とコストがかかるため、慢性的な人材不足に悩む現場も多いです。そこで、外部の協力会社と提携して一部の作業を外注化したり、作業に必要なスキルを簡略化する仕組みづくりを行うことで、リソース不足の問題を解消できます。
繁忙期の対応力
年末やセール時期などの繁忙期には、流通加工のリソースがひっ迫しやすいため、臨機応変な運用が求められます。
繁忙期には受注が急増する一方で、人員や設備、作業するスペースには限りがあります。こうしたピーク時の需要に柔軟に対応するためには、アウトソーシングやパートタイムスタッフの確保、機器の導入やレイアウトの見直しなど、平常時とは異なる対策が必要です。
スケジュール管理や事前予測を正確に行い、適切なリスクヘッジをしておくことで、ピーク時でも品質と効率を両立した加工が実現できます。
まとめ
流通加工は、商品のクオリティアップ、コスト削減、ブランドイメージの強化といった多面的な効果を得ることができます。特にEC市場やグローバル物流が拡大するなかで、顧客に適切な形で商品を届けるフレキシブルな対応力は企業にとって大きな強みです。
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