トラックバースとは? 基礎知識からトラックヤードとの違いも解説
トラックバースとは、トラックが倉庫に接車して荷物の積み下ろしを行うスペースのことです。スムーズな入出荷作業を支える重要な設備であり、物流現場の効率化に大きく寄与します。
では、なぜ今この「トラックバース」が物流業界でより注目されているのでしょうか。背景には、2024年問題をはじめとしたドライバー不足や積み下ろし時間の短縮ニーズといった、業界全体の課題があります。
本記事では、物流分野に強みを持つシーアールイーが、トラックバースの基礎知識や関連する設備、課題について独自の切り口でわかりやすく解説します。
トラックバースとは
トラックバースとは、倉庫や物流センターにおいて、トラックが貨物の積み下ろしを行うための荷役スペースのことを指します。荷役作業を円滑にすることを目的として設けられており、トラックバースを使用し貨物の積み下ろしを効率的に行うことで、ドライバーの拘束時間や作業員の負担を軽減します。中には、入庫と出庫の作業効率を高めるためにそれぞれ専用のバースを設けている施設も存在します。
正式にはトラックバースですが、略してバースと呼ばれることもあります。名前の由来は、船舶が停泊するバース(埠頭)からきており、物流の世界では物流船にあたるトラックが出入りする場所として活用されています。

トラックバースを1階及び3階に備えるマルチテナント型物流施設
トラックバースとトラックヤード・プラットフォームとの違い
物流施設の設計や運用を考える際、トラックバースの他にトラックヤード、プラットフォームという用語が頻繁に登場します。いずれもトラックの出入りや荷物の積み下ろしに関わる設備ですが、それぞれ役割が異なります。混同しやすい用語のため、違いを押さえておくことが大切です。
トラックヤードとは
トラックヤードとは、トラックバースを含んだ敷地全体を指す広いスペースのことです。トラックが施設に到着してからトラックバースに接車するまで、また荷役作業を終えた車両が退出するまでの一連の動きに必要な空間を指します。トラックバースが荷物の積み降ろし専用のエリアであるのに対し、トラックヤードは他の輸送手段への積み替えを行う中継拠点として、より広い範囲を指しています。
プラットフォームとは
プラットフォームとは、貨物を一時的に保管、整理、または積み替えるための平らな床面や作業スペースのことです。プラットフォームは、倉庫内外の作業員の導線の分岐点や、温度帯管理の境界性としての役割も果たしており、耐荷重、照明、排水、滑り止め処理といった設計要素が求められます。トラックバースが荷物の積み降ろし時にトラックが駐車する場所であるのに対し、プラットフォームはその積み降ろし作業を行うための設備そのものを指しています。
トラックバースに関連する設備
ここでは、トラックバースに関連する代表的な設備の特徴を確認します。
ドックシェルター
ドックシェルターとは、倉庫や工場での搬入時に、入出庫口とトラックやコンテナを密着させ、雨風や温度変化の影響を防ぐための密閉型の装置のことを指します。主に、食品や冷蔵・冷凍品、医薬品、電子機器など、温度管理が求められる商品を扱う際に倉庫や工場で使用されます。トラック後部の扉を開けて入出庫口に密着させ、室内側からスライダーやシャッターを開けて荷物の積み降ろしを行います。この方法により、入出庫時の外気による温度差を最小限に抑えられます。
ドッグレベラー
ドックレベラーとは、倉庫での積み降ろし作業時に使用する装置のことで、トラックの荷台やコンテナとプラットフォームに生じる高低差を無くし、荷役作業を効率的に行う目的で使用されます。機構としては装置で床を持ち上げ、傾斜を作り段差を解消する仕組みとなっています。全てのバースに設置されていないケースが多く、トラックの仕様や荷物の扱い方によって判断することが、使用の際のポイントになります。
パワーゲート
パワーゲートとは、トラックの荷台部分に設置された昇降装置のことで、倉庫側設備と連携して荷役作業を支える重要な装置のひとつです。正式名称は「テールゲートリフター」ですが、極東開発工業㈱の商品名「パワーゲート」という呼び名が広まり、一般的に使われるようになりました。電動または油圧式の装置で、使用することで荷台に載せられた重い荷物を効率良く積み下ろすことが可能になります。人の手で持ち上げるのが難しい重い荷物や、大量の荷物で積み降ろしに時間がかかる場合でも、作業が素早くスムーズに完了することができます。またパワーゲート車の場合、接車するプラットフォームの高さ(高床、低床等)に対して柔軟に対応することができます。
トラックバースに関連する課題
荷待ち時間の長期化
配送現場ではトラックの到着が集中する時間帯があり、一度に多数の車両がバースを使おうとすると待機列ができてしまいます。ドライバーの拘束時間が増えることで人件費がかさむこと、ロードサイドでの違法駐車や交通渋滞の原因になることも問題です。荷待ち時間が長期化すると、ドライバーの疲労やストレスも高まります。ドライバーの長時間労働の改善に向け、2023年6月に政府が策定した「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」では、「発荷事業者及び着荷主事業者に対して、荷待ちや荷役作業等の合計は2時間以内とし、これを達成した場合は1時間以内を目標に更なる時間短縮に努める」と定められました。社会的責任がより求められる中で、荷主・運送会社両方が改善策の導入に向けて連携することが求められています。
入荷と出荷を同時に行う非効率性
倉庫によっては入荷と出荷を同じバースで同時並行的に行っている場合があります。これによりトラック同士のバッティングが発生し、スムーズな作業進行を妨げる原因となることが少なくありません。可能であればバースを複数に分ける、またはスケジュールを分割するなどの対策を講じ、作業スペースの奪い合いを防ぐ工夫が望まれます。
トラックバースの混雑解消方法とは
トラックバースは、近年混雑緩和、待機時間削減を目的として予約システムの導入ケースが進んでいます。適切なスケジューリングが行われれば、現場作業の負荷や待機トラックの数を大幅に削減することが可能です。
バース予約管理システムの活用
バース予約管理システムは、トラックドライバーや運送会社が事前に入荷時間を指定することにより、バースの混雑を減少させるためのシステムのことを指します。トラックの到着予定をあらかじめ予約システムで管理することで、待機時間やバースの取り合いによる混雑を緩和できます。たとえば、SM物流研究会では2023年、荷待ち・荷役作業等の削減に向けて、バース予約管理システムの導入をはじめ、パレット納品の拡大やドライバーの荷役作業の明確化など、さまざまな取り組みを進めていました。その結果、2023年10月時点で物流事業者10社の1時間超過率は14.8%(3348台)でしたが、おもに入荷バース予約システムの活用が進んだことにより、2024年10月にはこれが1.2%(345台)にまで大幅に改善されました。
このように、バース予約管理システムの活用は、運送会社同士の連携や情報共有が不可欠となりますが、業界全体での取り組みが広まりつつあります。
倉庫管理システムとバース予約管理システムの連動
上記で記述した、バース予約管理システムと倉庫管理システムを連動させれば、到着予定データと入荷予定データを突き合わせ、作業タイミングをさらに正確に調整可能です。入庫した時点で在庫データがリアルタイム更新され、出荷スケジュールやトラックの到着時刻と同時に確認できる仕組みを活用することにより、在庫切れなどの不測の事態を事前に察知し、柔軟に対策を打てるのです。また、バースの空き枠や作業人員の確保状況を考慮しながら予約を調整すれば、倉庫内の混雑も大幅に緩和できます。情報が全てオンラインで共有されるため、担当者間のコミュニケーションロスも減少するメリットがあります。
まとめ
トラックバースは、荷役作業を円滑にするために必要なスペースです。本記事を通じて、トラックバースの基本的な概要や関連する設備、関連する課題について包括的に解説してきました。トラックバースに関する課題などの解決に取り組まれる際は、複数企業からなる”物流全体最適化”を支援・実現するソリューションサービスを提供するシーアールイーにご相談ください。
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