2025年の猛暑に備える|物流倉庫の暑さ対策とは
2025年の夏は、全国的に平年よりも気温が高くなる可能性が極めて高いと気象庁が発表しています。特に東日本では70%、西日本・北日本でも60%の確率で「平年より高い気温」が予測されており、猛暑日や熱帯夜の増加が懸念されています。このように、厳しい暑さが予想される2025年の夏は、倉庫業務に従事する現場では「暑さ」が安全性と生産性に大きな影響を及ぼします。倉庫内は外気の影響を受けやすい構造である上に、空調設備が十分に整備されていない倉庫の場合、夏場の作業環境は極めて過酷です。
そこで、本記事では倉庫内の暑さ対策の重要性から具体的な対策方法、実施のポイントなどを網羅的に紹介します。この機会に、倉庫内環境の見直しと改善に取り組んでみてはいかがでしょうか。
倉庫内の暑さ対策の重要性
高温環境が続く倉庫内では、作業の効率低下や熱中症のリスクが高まり、従業員の安全と健康を確保するうえで暑さ対策が不可欠です。倉庫内は広い空間である一方、空調設備が十分に行き届かないことが多く、真夏には屋外よりもさらに気温が上がるケースも少なくありません。作業者の労働環境の整備を軽視すると安全、品質、生産性と全体が低下する恐れがあります。長期的に見ても、暑さ対策への投資は大きな損失を防ぐうえで欠かせない意義を持ちます。
倉庫の中の適正温度と実際の温度は?
適正温度を検討する場合は、暑さ指数(WBGT(湿球黒球温度)を意識しましょう。暑さ指数とは、気温・湿度・輻射熱(直射日光や地面からの熱) を考慮した暑さ指数で、熱中症予防の指標として広く使われています。物流倉庫のような、高温環境下での作業や運動の安全管理に役立ちます。暑さ指数によると、28℃以上(警戒レベル)になると、熱中症になるリスクが高まると言われています。まずは倉庫内の温度や湿度を定期的に測定し、可能な限りリアルタイムで確認することで、安全な作業環境を維持しましょう。

倉庫内が暑くなる原因
最適な対策を考えるには、まず原因を把握することが重要です。倉庫の内部には多くの資材や商品が保管されている場合が多いため、空気の流れが滞りやすい傾向にあります。空調機器があっても配置の仕方やメンテナンス状況によっては十分に稼働しきれないこともあり、こうした要因が重なると高温化の問題が深刻化します。まずは倉庫の構造や設備自体を把握し、弱点となっている部分を洗い出しましょう。
構造上の問題や折板屋根が放射する輻射熱
倉庫の多くは、折板屋根に代表される金属製屋根を採用しています。金属製の屋根は、夏の日差しを直接受け止め、直射日光による輻射熱の影響を受けやすいです。蓄熱された熱が倉庫内へ放射されるため、天井付近だけでなく全体が高温になりやすいです。また、広いスペースを確保するために天井を高くしている場合、上部に熱気がたまりやすく、換気が不十分なまま熱がこもり続けます。特に、金属製の屋根や壁材を使っている場合、日差しによる熱の蓄積はさらに加速します。
空調設備の老朽化や故障
空調設備は適切にメンテナンスを行わないと、冷却能力の低下や異音などの不具合を引き起こす場合があります。フィルターの目詰まりや部品の劣化が進むとエネルギー効率も落ちてしまい、倉庫内を十分に冷やすことが難しくなります。最終的には設備投資の先送りが原因となり、倉庫内の環境管理が後手に回るリスクが高まる点にも注意が必要です。
倉庫全体で行う暑さ対策
倉庫規模での環境改善を目指すには、冷却設備の導入や断熱対策など、さまざまなアプローチを検討する必要があります。庫内で特に熱がこもりやすいエリアを把握したうえで、最適な対策を実施しましょう。
スポットクーラーや業務用エアコンの導入
設置が比較的容易なスポットクーラーは、特定の作業エリアを集中的に冷却できるため、コストを抑えつつ効率的に涼を取る手段として有効です。比較的作業位置が固定されたプロセス(検品や梱包等)に向いています。業務用エアコンの導入は広範囲を冷やす際に役立ちます。倉庫では置き型空調や釣り型空調、ダクトを設けて冷却効果を高めたい場所に落とすなど設置方法も複数あります。それぞれメリット・デメリットがあり、導入費用やランニングコストも高いため、設備の利用頻度や作業量を踏まえて検討することが求められます。
断熱材や遮熱塗料の活用
屋根や壁に断熱材を入れたり、遮熱塗料を塗布することで、外気温の影響を軽減し、倉庫内の温度上昇を抑えやすくなります。特に日照時間が長い夏場は、直射日光の影響を大きく受けやすいため、遮熱対策が重要です。既存の倉庫に後から施工する際には、施工期間や費用の面で計画的に進めることがポイントです。
風通しと換気の改善
大型ファンの設置や換気扇の増設によって、倉庫内の空気循環を高める方法も効果的です。滞留した熱気や湿気を外へ逃がし、新鮮な風を確保することで体感温度が大きく変わります。昨今では大型シーリングファンを導入する施設、企業もあります。配置する場所や風の流れを考慮し、効率よく空気を動かせるように設置すると、作業環境が格段に快適になります。
作業者個人で行う暑さ対策
個々の作業者が実践できる対策を取り入れることで、熱中症リスクは一層低減します。
倉庫作業では冷房設備が行き届いていない場所も多く、作業者自身が暑さをしのぐための工夫が欠かせません。適切な服装やクールアイテムを着用しながら、定期的な水分補給を行うことが、安全と健康を守る基本となります。
空調服やアイスベスト、ネッククーラーの着用
空調服は内蔵ファンによって空気を循環させて体表面を冷やす仕組みであり、重労働の現場でも効果を発揮します。アイスベストやネッククーラーは持続的な冷却効果が見込めるため、炎天下の作業時でも体感温度を下げやすいです。こうしたアイテムを活用することで作業の快適性が向上し、疲労の蓄積を抑えられます。
冷却タオルや保冷剤を活用した冷却アイテム
濡らして振るだけで冷却効果が出る冷却タオルや、保冷剤をポケットに仕込めるベストなど、多様な冷却グッズが市販されています。首元や脇の下など、太い血管が通る部分を冷やすと効率よく体温を下げられるため、熱中症予防に有効です。これらは取扱いが簡単で持ち運びもしやすいため、倉庫のような広大な作業エリアでも活用しやすいでしょう。
こまめな水分・塩分補給と休憩の徹底
作業による発汗量が増える夏場は、水分とともに失われるミネラルを補給することが非常に重要です。スポーツドリンクや経口補水液、塩タブレットや飴等を活用しながら体調管理を行いましょう。全員が周囲の体調変化に気を配り合うことで、熱中症発生の早期発見や重症化の防止につながります。
適切な作業服やヘルメットインナーの利用
通気性の良い作業服や吸水性の高いインナーを着用することで、汗を素早く発散し体温をコントロールしやすくなります。ヘルメットインナーも蒸れを軽減する効果があるため、長時間装着時の不快感を大きく減らせます。こうした装備は初期投資が比較的安価なものも多く、導入しやすい点が魅力です。
倉庫の暑さ対策を実施する際のポイント

投資コストや省エネ効果など、実施の際には複数の観点から総合的に検討しましょう。また設備投資だけでなく、作業スケジュールの調整や作業員への教育など、運用面の対策も合わせて検討すると総合的な効果が高まります。以下では、倉庫の暑さ対策を実施するうえで特に重要視すべきポイントについて解説します。
コストと効果のバランス
空調機器や断熱材などの導入は、初期費用が高額になる場合もあります。とはいえ、周囲温度が大きく下がれば作業効率が向上し、熱中症をはじめとするトラブルも減少するため、最終的にはコスト削減につながるケースが多いです。費用対効果をシミュレーションしながら、必要最低限の投資で最大の成果を狙うことが重要となります。
省エネ効果と光熱費削減の配慮
省エネ性能に優れた空調機器や太陽光パネルの導入など、光熱費を抑える工夫は長期的な経営面でもプラスになります。例えば、気化式冷却装置は電力消費が比較的少なく、十分な冷却効果を得やすいのが特徴です。定期的にエネルギー使用量と効果を測定し、改善を繰り返すことで経費削減と快適環境の両立を目指すことができます。
業務内容や環境に合わせた適切な対策の選択
取り扱う商品や作業内容によって、冷却対策の優先度や方法は変わってきます。食品や医薬品など温度管理が厳格に求められる場合には、冷凍・冷蔵設備との併用を検討する必要があります。反対に大型資材中心の倉庫であれば、重点的な局所冷却と人の動線に合わせた換気対策が取り入れやすいでしょう。
まとめ
倉庫の暑さ対策は、作業者の安全と生産性を確保するために不可欠です。遮熱対策・換気・冷却設備の導入やグッズの購入など、複数の対策を組み合わせることで、より快適な作業空間を実現できます。倉庫の環境改善に取り組み、快適で効率的な作業場を目指しましょう。
シーアールイーが運営するサイト「CRE倉庫検索」では、各社の物流課題への取り組みを独自取材したインタビュー記事など物流課題の解決のヒントとなる情報も豊富に掲載しておりますので、ぜひご覧ください。