倉庫の耐震基準とは?耐震・免震・制振の違いも解説
日本は地震大国と言われるように、日本各地で大規模な地震が発生しています。物流倉庫でも、地震によって多大な被害が出た実例もあります。大地震によって、物流施設に被害が出ると庫内の作業員の安全はもちろん、事業継続、保管されている製品や設備にも大きな影響を与えます。そのため、倉庫を選定・運用する際には現在の耐震基準、耐震対策である耐震・免震・制振の理解が不可欠です。
本記事では、1981年以前と以後で変わる旧耐震基準・新耐震基準の違いや、耐震・免震・制振構造の特徴を詳しく解説していきます。
倉庫の耐震基準
建築物全体の安全を確保するために耐震基準が定められています。
この基準は日本の建築基準法によって定められ、一定の強度や設計要件を満たさなければ建設許可が下りません。特に物流を担う倉庫は、倒壊や設備の損壊が企業活動に深刻な影響を及ぼすため、基準の遵守と実際の建物状況の確認が非常に大切です。
新耐震基準とは
1981年以降は、新耐震基準と呼ばれるより厳しい規定が適用されています。震度6強から7クラスの大きな地震でも簡単には倒壊しないように設計されることが求められ、補強の手法や材料も多様化しています。倉庫のように大規模な建物であっても、新耐震基準をしっかり満たしていれば被害を最小限に抑えられる可能性が高いです。
旧耐震基準とは
旧耐震基準は1981年以前に施行されていた建築基準で、主に震度5強程度の地震までを想定していました。当時は地震観測データが限られていたこともあり、現在の基準と比べて求められる安全係数が低くなります。そのため、旧耐震基準で建てられた倉庫では、大地震に対する補強・改修が強く推奨されています。
旧耐震基準と新耐震基準との違い
旧耐震基準で設計された建物は、想定される地震規模が現在ほど大きくなかったため、揺れに備える構造が十分でない可能性があります。新耐震基準は、最新の観測データや設計理論を反映し、震度6強以上でも建物が致命的な被害を受けにくい設計とする点が大きな違いです。そのため、旧耐震基準の倉庫は荷重の変更や使用用途の拡大を機に点検を行い、必要に応じて耐震改修を検討することが推奨されます。
倉庫の耐震構造の種類
倉庫の建物を地震から守る方法としては、主に耐震構造・免震構造・制振構造の三つが挙げられます。
これらの構造を理解することで、自社の倉庫にどのような耐震技術が導入されているか、または新しく開設する物流拠点にどのような耐震構造を導入を予定すべきかなのかがわかります。
耐震構造

耐震とは、建物が地震の揺れに耐える能力のことを指します。つまり、耐震構造とは建物全体を頑丈にし、外部からの揺れに耐えられるように設計する基本的な構造です。具体的には、ブレース(筋交い)を増設したり、柱や梁を高強度の材料で補強することで、水平方向からの揺れにも対応しやすくなります。
耐震構造は、揺れに耐えることを主な目的としています。そのため、揺れを吸収したり、逃がしたりする効果はあまり期待できません。結果として、地震の揺れが建物に直接伝わり、大きな地震が発生した際には激しい揺れを感じることになります。
また、揺れを逃がしにくい特性から、地震によるダメージが建物に蓄積していく可能性があります。これにより、耐震性が徐々に低下し、竣工当初では耐えられるはずの地震でも、最終的には倒壊のリスクが高まる可能性があります。耐震構造は、制振装置や免震部材を使用しないため、他の構造と比較して建設コストが抑えられるのが特徴です。
免震構造

免震とは、地震の揺れを受け流す能力のことを指します。免震構造は、地盤と建物の間に免震装置を設置し、大きな地震波からの揺れを免震層で吸収することで、地震の揺れから建物を切り離す構造です。建物の下部(基礎部分)にゴムや滑り支承などを設置し、水平方向の力を吸収・分散するため、建物の揺れは地面の揺れよりもかなり小さくなり、庫内の保管物の荷崩れによる荷の落下や建物内の設備の損傷を最小限に抑えられる特長がありますが、免震構造は積層ゴムなどの特殊な装置を利用するため3つの構造の中で一番コストがかかることも特徴として挙げられます。
しかし、近年ではピース・ケース品の上部空間を活用した高密度保管設備が一般化したことで、ラックの高層化が進み、倉庫の揺れを最小限にする免震構造を物流拠点の選定要件に挙げる企業も少なくありません。
制振構造

制振とは、地震の揺れを吸収することであり、制振構造は、建物内部に制振装置を取り付けて、揺れのエネルギーを効率的に吸収する手法です。梁と梁の間などにダンパーを設置し、振動を発生源で減衰させるため、免震構造ほど大掛かりな工事にならないケースが多いとされています。建物の揺れを軽減することから、建物の損傷を低減する効果もあります。制振技術を活用した倉庫では、揺れにくくなるため、棚の転倒や荷物の落下被害を減らすことが期待できます。制振構造は、免震構造よりコストを抑えて導入でき、免震構造と耐震構造の間のコスト感と考えておくと良いです。
倉庫における地震対策
倉庫では構造面での耐震対策だけでなく、内部の設備やラック類の地震対策も不可欠です。
たとえ耐震構造を十分に備えている倉庫であっても、設備やラックの転倒、保管物の落下などによる二次被害への対策を講じなければなりません。地震時に内部設備が大きく移動してしまうと、従業員の安全確保はもちろん、物流拠点としての機能低下も避けられません。設備の定期的な点検や配置変更の際には、万一の緊急対応も視野に入れた検討が必要です。
設備やラック類の転倒・落下防止対策
ラックの支柱を床や壁に固定し、転倒防止金具やワイヤーを利用して補強するのが基本的な対処法です。特に背の高いラックは重心が高くなるため、地震時の揺れで倒れやすくなります。ラック自体に免震装置を設置するなど対策を行うほか、固定器具のぐらつきや固定器具の緩みなどを定期的に点検し、不安定な箇所は補強または交換するなど、総合的な地震対策を行いましょう。
まとめ
倉庫の耐震性向上は、従業員の安全確保と事業継続に直結します。物流倉庫の選定時や、現在利用している倉庫の構造を理解することで、ラックや設備の落下防止策などの庫内の地震対策を講じることができるほか事業継続計画(BCP)において自社に最適な拠点配置を行うことにもつながるでしょう。
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