物流における横持ちとは?横持ちが生じる主な理由や問題点、改善策などを解説!
物流業界では、「横持ち」という言葉が使われることがあります。業界では比較的よく使われる言葉ですが、どのような意味なのか分からないという方や、正しく理解できているか不安という方も多いでしょう。そこで本記事では、物流における横持ちの意味を解説するとともに、問題点や改善策などを紹介します。
物流における横持ちとは
物流における横持ち(横持ち配送)とは、最終目的地までにいくつかの拠点を経由する配送方法のことです。例えば、加工拠点と保管拠点などが別々にある場合に、それぞれの間で荷物を移動させることを横持ちといいます。そのほか、物流センターや倉庫、店舗や営業所など、経由する拠点は物流ルートにより、さまざまです。
また、同じ拠点内において、作業場所・保管場所の間で荷物を移動させることを指す場合もあります。
横持ちと縦持ちの違い
物流業界では、横持ちの対となる「縦持ち」という言葉も用いられています。縦持ちとは、荷物を縦(上下)に移動させることです。例えば、トラックで運んできた荷物をビルの上階まで搬入する場合や、地下の倉庫から上階に荷物を運ぶ場合などに使われます。
距離的には短いものの、階移動の負担や特定の機材使用などでコストが発生する場合があります。一方、横持ちは地理的に離れた拠点間を結ぶため、輸送ルートの最適化や複数車両の割り当てなどの視点が必要です。縦持ちと横持ちは方向の違いこそあれ、効率的に作業を進めなければ余分な費用や時間がかかる点で共通しています。
横持ちに関連する物流用語
物流業界で使われる用語には、ほかにもさまざまな種類があります。ここでは、横持ちに関連する物流用語を紹介します。
ミルクラン | ミルクランとは、複数の集荷先を巡回しながら、荷物を集める輸送方式です。牛乳業者が自ら酪農家のもとを回り牛乳を集めることから、こうした輸送方式をミルクランと呼ぶようになりました。日本では「巡回集荷」とも呼ばれています。発荷側は輸送コストを削減でき、着荷側は検品コストを減らせるので、双方にとってメリットがある輸送方式です。 |
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回送 | 本来、回送は「車両を空車の状態で他の場所に移すこと」「一度送られてきたものを、他の場所に送ること」などの意味を持つ言葉です。物流業界においては、横持ちとほとんど同じ意味で使用されることがあります。 |
横持ちが必要となる主な理由
横持ちが必要となる主な理由は、次の3つです。
・物流機能の分散
・交通や車両による問題
・繁忙期による問題
それぞれ、以下で詳しく解説します。
物流機能の分散
横持ちは、加工や出荷、配送などの拠点の持つ物流機能により起こります。物流機能が1つの拠点にまとまっていれば、拠点間で荷物を移動させる必要はありません。しかし、各拠点の機能や規模には限界があり、1つの拠点に全ての機能をまとめることはハードルが高いこともあります。
例えば、拠点を多く持っている物流事業者が採用している場合が多い、「ハブアンドスポーク輸送」では、横持ちが発生する場合があります。ハブアンドスポーク輸送とは、中心となる拠点(ハブ)に荷物を集約し、エリアごとの小規模な拠点(スポーク)ごとに荷物を振り分ける配送方式のことです。複数のハブを持つ物流網で、在庫の偏りの解消や負荷分散するためにハブ間で横持ちが発生したり、近隣の配送拠点間で緊急対応や効率化のため横持ちが発生する場合があります。
交通や車両による問題
配送先によっては、周辺の道路幅に制限が設けられており、大型トラックでは進入できない場合もあります。はじめから適したサイズのトラックで輸送する方法もありますが、納品先が複数ある場合は、配送ルートを最適化するため、一度別の拠点まで運んでから小型トラックに荷物を移すケースも少なくありません。
また、渋滞などの交通状況の影響を受けて、荷物を別の車両に積み替えて運ぶケースも考えられます。
繁忙期による影響
セール期間や年末年始など、一時的に膨大な注文が集まるタイミングでは、在庫量も倉庫内の入出荷作業量も従来拠点では対応しきれないことがあります。そこで、複数の拠点を使い分けて余裕のある場所に在庫を一時的に運ぶ、在庫保管だけでなく作業自体もその拠点で行うなどの目的で横持ちが重宝されます。こうした季節要因を見越したうえで、どの拠点にどれほど在庫を持つかを事前に計画しておくことが大切です。
横持ちの問題点
横持ちにより荷物の拠点間の移動が生じることには、次のような問題点があるとされています。
コスト増加やスペースの圧迫
拠点を経由する回数が多いほど、輸送距離が伸びたり積み替え作業が増えたりしてコストを押し上げます。また、ドライバーが通常の労働時間を超えて配送業務を行う場合には、その分の残業代や燃料費などの支払いも必要です。加えて、拠点内部で一時的に在庫を置くスペースが必要となるため、倉庫スペースや人員の手配にも影響が及ぶ点が課題です。こうした実務負担は特に大口の横持ちでは顕在化しやすく、改善に取り組まないと大きな負担につながります。
タイムロスの発生
横持ちが発生すると、配送先までの間に各拠点への寄り道が必要になるため、移動距離が長くなります。拠点を移動する度に積み替えや荷下ろしなどの作業も生じるため、配送先に最短距離で向かう場合と比べると、到着までに多くの時間がかかってしまうでしょう。また、横持ちは予期せず発生することもあるため、スケジュールに完全に組み込むことが難しいという側面もあります。
荷物の破損リスクの増加
横持ちが生じると、荷物の積み下ろしの回数が増えます。すると、作業員が荷物に触れる回数も増えるため、それだけ破損リスクも増加してしまうでしょう。特に、壊れやすい荷物を扱う場合は、破損リスクを軽減するための工夫が必要です。
横持ちを改善する方法
横持ちは無駄な工数が多く、コスト面での負担も増大するため、以下のような方法で改善を試みましょう。
余分な在庫を抱えない
商品の在庫を多く抱えると、それだけ必要な保管スペースも増加します。1つの倉庫に収まりきらない場合は、ほかの倉庫が必要となり、拠点間の横持ちが発生しやすくなります。そのため、横持ちを防ぐためには、在庫を適正に保つことが大切です。繁忙期への対応のために横持ちが発生している場合は、需要が増加するタイミングを予測した在庫管理を行いましょう。在庫を適切に維持するために、在庫管理システムを導入することもおすすめです。
荷物の管理方法を工夫する
倉庫で保管している商品の中には、加工が必要なものもあれば、不要なものもあります。また、商品により出荷の頻度も異なります。特性の異なる荷物を同じ場所で保管していると、横持ちが発生しやすくなるため注意が必要です。
「出荷の頻度が高いもの」「出荷先のエリアが同じもの」など、特徴が似ている商品は、同じ拠点で保管することをおすすめします。また、同じ拠点内でも特性ごとに保管場所を分けることで、倉庫内作業を効率化できます。
物流機能の最適化・集約
現在の拠点の配置、または物流機能のあり方を戦略的に見直し、拠点集約や分離最適化を検討することで横持ちの頻度や量の改善を行うことも可能です。主要な交通網や需要の多いエリアへ集約したり、加工・梱包・配送などの物流機能が分散している場合は、機能を集約することも大切です。また検討の過程で横持ちの発生しない独立した商品群、工程などがある場合に分離をし、代わりに必要な商品を取り扱うなど方法もあります。現状複数の拠点を構えている場合は、機能の集約・分離できるところがないか検討してみましょう。全てを1つに集約しなくても、各機能をある程度まとめるだけで効果を期待できます。
物流機能に対する編成にはコストがかかりますが、横持ちによるコストを削減できるため、長期的に見ればプラスになる可能性が高いでしょう。
まとめ
横持ちとは、最終目的地までにいくつかの拠点を経由する配送方法のことです。横持ちは、人件費や燃料費など、移動にかかるコストが多くかかります。横持ちの改善には、適正在庫の維持や物流機能の集約などが有効です。
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