ハブアンドスポークとは?メリット・デメリットや導入ポイントを解説
時間外労働の上限規制や人手不足などの問題を抱える物流業界にとって、輸送効率の向上は喫緊の課題といえます。輸送効率の向上が期待できる輸送方式のひとつとして「ハブアンドスポーク」という方式があります。
本記事では、ハブアンドスポークの仕組みやメリット、導入にあたって注意したいポイントを解説します。
ハブアンドスポークとは
ハブアンドスポークとは、中心拠点(ハブ)と分散された拠点(スポーク)を組み合わせたネットワークを指します。中核となる物流拠点から、各地の拠点に荷物を輸送する形態のことです。
車や自転車の車輪のように、中心から伸びた枝の先に各拠点がある様子をイメージすると分かりやすいでしょう。
ハブアンドスポークを導入すると、中心拠点に一度荷物を集約してから、仕分けをして各拠点に輸送することで、複雑な輸送経路を簡素化できます。例えば、10か所の拠点が相互に荷物を運ぶためには通常45本の経路が必要ですが、ハブ拠点を経由させれば必要な経路は10本で済みます。
ハブアンドスポークの導入事例
ハブアンドスポークの仕組みは、日本でも様々な企業が導入しています。
ヤマト運輸株式会社
大手配送キャリアのひとつである「ヤマト運輸」では、全国にターミナル拠点となる「ベース」を設置し、そこから各地の営業所へ荷物を輸送するシステムを80年代に確立しました。さらに、物流業界における「2024年問題」に対応するため、拠点の集約・大型化やターミナル機能の見直しを進め、既存ネットワークの強靱化を行っています。
新関西国際空港株式会社
大阪府に位置する「関西国際空港」は、西日本における国際ハブ空港です。また、アジアからの貨物をアメリカに輸送するハブとしての機能も備えています。延床面積25,000平方メートルのフェデックス北太平洋地区ハブに北アジアからの貨物を集約し、そこからアメリカに発送します。
ハブアンドスポークに関連する物流手法
ここでは、ハブアンドスポークに関連する物流手法である「横持ち」と「ミルクラン」について解説します。
横持ち
横持ちとは、いくつかの拠点を経由しながら荷物を運ぶ配送方法のことです。ハブアンドスポークにおける中心拠点から各地の拠点への荷物の移動も、横持ちに該当します。また、異なる拠点間の移動だけでなく、同じ拠点内の移動を横持ちという場合もあります。例えば、同じ拠点内で作業場所から保管場所に荷物を移動させる場合です。
ミルクラン
ミルクランは、日本では巡回集荷とも呼ばれ、いくつかの集荷先を回りながら荷物を集める輸送方式のことを指します。牛乳業者が酪農家を一軒ずつ回って牛乳を集めることから、ミルクランと呼ばれるようになりました。発荷側は輸送コスト、集荷側は検品コストを削減できるメリットがあります。
ハブアンドスポークのメリット
ハブアンドスポークを導入すると、次のようなメリットを期待できるでしょう。
輸送効率が高まる
ハブアンドスポークを採用したネットワークでは、全ての荷物をハブ拠点に集約してから輸送します。そのため、スポーク拠点同士の荷物のやりとりは不要となり、通常よりも少ない路線で効率的に荷物を運べるため、輸送効率の向上を実現可能です。
積載率が向上する
ハブ拠点に荷物を集め、仕分けをしてからスポーク拠点に輸送するため、トラック1台あたりの積載率を向上させることも可能です。トラックの積載率が向上すれば、輸送効率をさらに高められます。特に、荷物を運ぶ量がそれほど多くないルートがある場合については、ハブアンドスポークを採用することで積載効率の改善を期待できるでしょう。
ドライバーの負担が軽減される
全ての荷物をハブ拠点から輸送する形になれば、各地の拠点を経由する複雑な輸送が不要になり、輸送距離や回数を抑えられます。すると、ドライバーがトラックを走らせる距離や時間が短縮され、物流現場の負担軽減につながるでしょう。また、これにより、輸送コストや人件費、CO2排出量の削減などの副次的な効果も期待できます。
ハブアンドスポークのデメリット
ハブアンドスポークは輸送効率や積載率の向上につながるものの、次のようなデメリットもあるので注意が必要です。
導入費用が高額になりやすい
ハブアンドスポークのシステムを確立するためには、中心となるハブ拠点を設置し、ネットワークを整備する必要があります。大型拠点の新設には大きなコストがかかるため、導入費用は高額になりがちです。ハブ拠点だけでなく、スポーク拠点も新設する必要がある場合は、さらにコストが増大するでしょう。
ハブの問題が全体に波及する
ハブアンドスポーク形式の輸送ネットワークでは、全ての輸送経路がハブ拠点を経由します。そのため、ハブ拠点で問題が起こった場合には、その影響が各地のスポークにも波及してしまいます。もしも、自然災害といったトラブルによりハブ拠点に甚大な被害が及んだ場合、ネットワーク全体が停止する恐れもあります。
直送よりもリードタイムが長くなる場合がある
物流におけるリードタイムとは、荷物を輸送先に届けるまでの期間のことです。ハブアンドスポークでは荷物を一度ハブ拠点に集約するため、輸送先に直送する場合と比べて、リードタイムが長くなるケースもあります。例えば、拠点同士の距離が近い場合は、一度ハブ拠点に荷物を送るより、直接届けた方が輸送距離が短く済む可能性が高くなります。
ハブアンドスポークを導入する際のポイント
ハブアンドスポークを導入する際は、次の2つのポイントを押さえることが大切です。
倉庫内作業の効率化を図る
ハブアンドスポークの導入により荷物が集約される分、ハブ拠点における荷量は増大することが予想されます。輸送ネットワークを簡素化しても、ハブ拠点がボトルネックになってしまっては、輸送効率の向上効果が損なわれてしまうでしょう。
ハブアンドスポークを導入する際には、ハブ拠点の倉庫内作業の効率化もセットで考えることが重要です。具体的には、以下のような方法が考えられます。
・適正在庫の維持
・倉庫レイアウトの最適化
・作業マニュアルの整備
・十分な人材の確保
・整理整頓の徹底 など
綿密なシミュレーションを行う
ハブアンドスポークには様々なメリットがありますが、リードタイムやコストの増加や災害等による物流の停止などのデメリットもあります。これらのリスクを低減するためには、綿密なシミュレーションが必要です。ハブ拠点とスポーク拠点の距離や、導入に伴うコストなどを事前にしっかり予測し、総合的に判断して導入を決定することが大切です。
まとめ
物流におけるハブアンドスポークとは、中心拠点(ハブ)に荷物を集約し、各拠点(スポーク)との中継地となる輸送方式です。この方式を導入することで、輸送効率の向上やドライバーの負担軽減などのメリットを期待できます。ただし、ハブ拠点を中心としたネットワークを構築するためには、ハブ拠点やスポーク拠点などを新設する必要があります。
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