循環棚卸とは?メリットや注意点、手順や効率化する方法について解説
棚卸は企業の在庫管理において欠かせない業務ですが、複数の拠点や多品種の商品を扱っている場合、棚卸に多くの人員と時間を割り当てざるを得ないため、通常業務に影響が出てしまうケースも少なくありません。
本記事では、概要やメリット・デメリット、手順や効率化するためのポイントについて詳しく解説します。
循環棚卸とは
循環棚卸とは、実際に倉庫に保管される在庫数を確認する実地棚卸の一つの方法で、在庫を場所や種類などで小分けにして周期的に在庫数を確認することです。
循環棚卸の目的
循環棚卸の最大の目的は、在庫を分割してこまめにチェックすることで、在庫差異や在庫ロスを早期に発見し、原因をすぐに突き止められるようにすることです。頻繁に確認作業を行うため、商品の紛失や入力ミスなどが起きても、問題の発生から対応までのタイムラグを最小限に抑えられます。
実地棚卸の手法「一斉棚卸」とは
一斉棚卸は、実地棚卸のもう一つの方法で、棚卸日を決めて全在庫を一度に確認する方法です。多くのスタッフが一斉に動くため、棚卸期間中は業務を大幅に制限したり停止したりしなければならない場合もあります。また、一斉棚卸では膨大なデータを一度に扱うため、帳簿上との差異の洗い出しや原因究明に多大な時間を要することがあります。次のセクションでは、循環棚卸について一斉棚卸と比較しながら、メリットを解説します。
循環棚卸のメリット
循環棚卸を導入することで、在庫管理の精度向上や業務効率化など多様なメリットが得られます。
業務を止めずに棚卸が可能
一斉に棚卸を行う場合、どうしても倉庫や店舗をクローズしたり、作業時間外を割り当てたりする必要が出てきます。しかし、循環棚卸であれば少数のスタッフを計画的に配置することで、通常業務と並行して棚卸を進めることが可能です。これにより、販売機会の損失や作業ロスを最小限に抑えつつ、在庫の正確性を保つことができます。
在庫差異の防止と精度向上
日常的に細かく在庫をチェックすることで、差異が生じた場合にすぐ気づきやすくなります。一斉棚卸だと、問題が起きていても次の棚卸日まで発見が遅れてしまうケースがありますが、循環棚卸なら定期的に少しずつ確認するため、問題を早期に修正するサイクルが生まれやすいのが特長です。
業務負担の分散
大規模な棚卸を一度に実施する必要がないため、多くの人員や時間を一度に確保する必要がありません。さらに、担当者の作業スケジュールを柔軟に組むことができるので、繁忙期でも棚卸が滞りにくくなります。
また、一斉棚卸はその特性上日頃から商品や業務に慣れている人員だけでは足りず、慣れていない作業者も混在するケースがあります。その場合、レクチャーや作業品質の監理など業務負担が増す傾向に対し、循環棚卸ではこの事象が発生しにくく、業務負荷の軽減にも繋がります。これは小売業や倉庫業のように頻繁な入出庫が発生する現場にとって大きなメリットです。
内部統制の向上
循環棚卸を行うことで、常に在庫状況をチェックする体制が整い、不正やミスが起きにくい環境づくりにつながります。一斉棚卸に比べて在庫差異の確認プロセスが回数多く行われるため、コンプライアンス上も信頼性が高いといえます。日頃から在庫の整合性を意識する社内文化が醸成されるという点でも、内部統制の強化につながります。ただ、会計・監査の観点からは荷動きしている中での棚卸より、荷動きの止まった環境の中で行う一斉棚卸を望む意見もあります。循環棚卸を行う上では実施手順や計画策定など事前に会計・監査部門と相談をしつつ導入すると良いでしょう。
循環棚卸の注意点
メリットが多い循環棚卸ですが、導入にはいくつか注意点も存在します。
スケジュール管理の難易度
少しずつ何度も棚卸を行うため、一度の棚卸作業自体は軽減されるものの、結果として確認プロセスが長期間にわたる場合があります。実施にあたっては作業計画を立て、しっかりとしたスケジュール管理が必要になりますが、日々の業務に必要なリソースとの兼ね合いやイレギュラー対応などを考慮する必要があり、その複雑さから管理の難易度が高くなりやすいです。
正確さを維持する難しさ
循環棚卸は、通常の営業中に行うため、作業中も商品の入出庫が続きます。そのため、実際の在庫数と棚卸結果との間にズレが生じやすいほか、部分的な確認のため全体像の把握が難しく、エラーの発見が遅れる可能性があります。
循環棚卸の手順
循環棚卸をスムーズに行うには、準備段階から具体的な流れを確立しておくことが重要です。
まずは、倉庫の中で棚卸を行う商品や区画など対象範囲や優先順位を決め、どのタイミングでどのように棚卸を実施するか、リソースはどのくらい必要かなど実施する上での必要な要素をスケジュールへ落とし込みます。続いて担当者へ棚卸手順や使用する管理システムの機能を周知徹底し、作業ミスを防ぐ手段を講じておきましょう。実際に棚卸をした時には帳簿上の在庫(理論在庫)との差異が発生します。差異があった時の記録や対処の手順も事前に固めること、またそもそもの差異の発生原因を特定して改善策を講じることが大切です。
特に多品種を取り扱う事業やフリーロケーションを採用している現場、入出荷の変動が激しい在庫を抱える現場では、細かい単位での棚卸計画が有効です。商品の動きが少ない時間帯やシーズンオフを活用するなど、現場の実情に合わせた柔軟な対応が必要になります。
循環棚卸を効率化する方法
継続的に行うからこそ、効率よく実施するための仕組みづくりが求められます。
循環棚卸を成功させるために、単に実施回数を増やすだけでなく、在庫管理体制そのものを最適化する方法を解説します。
明確な役割分担の策定
循環棚卸は継続的に行うため、誰がどの範囲をいつのタイミングで確認を行うのかを明確にする必要があります。作業工程を可視化し、責任の所在をはっきりさせることで、確認漏れやダブルチェックの不足を防ぐことができます。特に多拠点での管理を行う場合は、拠点ごとの担当者を設定し、定期的な情報共有の場を設けるとスムーズに運用できるでしょう。
在庫管理システムの導入
在庫管理システムを使えば、入出庫データをリアルタイムで把握できるため、循環棚卸の効果をさらに高めることが可能です。バーコードやRFIDを活用することで、棚卸作業のスピードと正確性が大きく向上します。また、棚卸結果の集計や差異分析も自動化できるものもあるため、担当者はより付加価値の高い業務に時間を割くことができるようになります。
まとめ
循環棚卸は、在庫の効率的な管理に有効な手段ですが、その導入には正しい理解と運用体制の整備が不可欠です。
一斉棚卸と異なり、普段の業務活動を抑制せずに在庫チェックが行える点が最大の強みといえます。そのためには、棚卸を行う範囲や回数、使用するツールなどを明確化し、組織的に進めることが大切です。継続的に行う作業だからこそ、担当者の教育やシステム活用など、長期視点の運用設計が必要になります。
事前の計画と正しい実施手順を踏まえれば、在庫差異やミスの抑制だけでなく長期的なコスト削減にもつなげられるでしょう。自社の現状を分析し、循環棚卸のメリットとデメリットを把握したうえで、在庫管理の最適化を図ることが重要です、
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