営業倉庫の登録でよくある質問を物流不動産のプロが回答
営業倉庫を開設するにあたって、倉庫業法の理解や登録に関する知識を持っておくことが重要です。営業倉庫の登録を検討されている方に向けて、物流不動産に60年以上携わってきたシーアールイーが、営業倉庫の登録の基礎知識や実際に聞かれる質問について解説します。
営業倉庫の登録の基礎知識
営業倉庫とは、荷主から貨物を預かり、契約に基づいて保管する倉庫のことです。
倉庫業法第3条では、「倉庫業を営もうとする者は、国土交通大臣の登録を受けなければならない」と定められています。つまり、第三者の貨物を扱い、寄託契約に基づいて保管を行う場合には、登録が不可欠です。
営業倉庫の登録に必要な条件
営業倉庫として認められるには、倉庫業法に基づき「登録拒否要件」(倉庫業法第6条)をクリアする必要があります。
倉庫業登録許可を受けるのに必要な要件は下記の3つです。
①申請者が欠格に当たらないこと
事業者本人または法人の場合、役員全員が、法律で定められた欠格事由(過去の登録取消から一定期間が経過している等)に該当しないことが条件です。
②倉庫が施設設備基準に適合していること
倉庫の種類に応じて、厳しい基準(建築基準法・都市計画法に適合、防火・耐力壁など)が定められています。
③倉庫管理主任者を選任できること
事業を適切に管理・運営するため、各倉庫に倉庫管理主任者を配置しなければなりません。
営業倉庫を開設するうえで、最も問題となりやすいのが「②の施設設備基準への適合」です。
注意したい営業倉庫の登録に必要な基準(施設設備基準)のポイント
建築基準法・都市計画法等の関係法令との整合
特殊建築物に分類される倉庫が建築基準法を満たすためには、耐火要求の構造であることや火災時の延焼を防止するための防火区画の設置が必須など、火災に関する基準は厳格に定められています。
また、営業倉庫の中でも1類~3類倉庫、冷蔵倉庫はそれぞれ壁や床の強度など倉庫業法施行規則による基準が定められているため、営業倉庫の種類によっても適合すべき基準は異なります。
都市計画法における用途地域の規定により、「準住居地域を除く住居系地域」以外の用途地域でも営業倉庫を開設することができます。市町村によっては用途地域以外に、地区計画や特別用途地区などにより、規制されている場合があります。
原則として、市街化調整区域内では倉庫の建築は制限されています。ただし、物流総合効率化法に基づく認定を受けた特定流通業務施設や、地方運輸局長が相当規模と認定する大規模流通施設については、倉庫の建設が認められ、営業倉庫の許可を取得できる場合があります。
特定流通業務施設となるためには、さまざまな基準を満たす必要があります。具体的には、高速道路のインターチェンジなどから5km区域内に立地していること、規模は普通倉庫の場合で平屋3,000㎡以上、多層階で6,000㎡以上であること、さらに構造が倉庫業法の施設設備基準に適合していることなど多様な基準を満たすことが求められます。このため、倉庫を検討する際には、必ず用途地域や各種規制を事前に確認することが重要です。
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倉庫使用に関する権利証明
営業倉庫として登録を行う際には、倉庫を使用する正当な権利を有していることを証明する必要があります。具体的には、不動産登記簿謄本の提出に加え、賃借する場合は賃貸借契約書、転借の場合は転貸承諾書が必要です。
必須書類の事前チェック
営業倉庫の登録申請では、建築確認関係の資料や設計図面など、多数の書類を提出しなければなりません。その中でも特に重要なのが「建築確認済証」「完了検査済証」であり、これらが揃っていない倉庫は倉庫業法が求める施設基準をクリアできるのか判断ができないため、登録が不可能です。
古い倉庫では、完了検査は受けているものの書類を紛失してしまっているケースも少なくないため、倉庫探しの段階で倉庫のオーナーや不動産業者に営業倉庫としての登録に必要な書類の有無を事前に確認しておくと安心です。
営業倉庫の登録におけるQ&A
Q1. どんな物件が営業倉庫の登録に向いていますか?
営業倉庫の登録には倉庫の「施設設備基準」を満たす必要があります。建築基準法や都市計画法、消防法に適合していることはもちろん、防火・耐震・防水・セキュリティなど各種設備要件も細かく設定されているため、営業倉庫の登録があらかじめ想定されているマルチテナント型倉庫などの新築の物件や、過去に倉庫業登録の実績がある既存物件だと比較的スムーズに登録することができます。古い倉庫は完了検査済証などの必要書類が紛失している場合もあるため、まず書類の有無を確認すると良いです。
Q2. どの書類を見れば営業倉庫の登録に向けた検討が進められますか?
倉庫業登録の申請で、倉庫の施設設備が基準を満たしているか審査に用いる書類のなかでも、最低限必要なものは、建築確認済証、完了検査済証、設計図面です。これらが揃っていなければ、追加調査が必要になるケースもあります。事前に物件オーナーや不動産会社に書類がそろっているのか確認しましょう。
Q3. 施設基準を満たしていない物件しか見つからない場合、どうしたらいいですか?
登録基準を満たさない物件は、用途変更による改修工事によって施設設備基準の適合を目指す方法があります。ただし、工事費や有効面積の減少リスクなどを考慮するために、専門家の事前アドバイスが不可欠です。
Q4. 営業倉庫の登録が可能な物件はどうやって探せばよいですか?
下記のグラフにもあるように、営業倉庫の所管面積は年々増加しており、需要に見合った物件は常に高い稼働率を維持しています。そのため、条件の良い物件は既存テナントが長期利用する傾向にあり、市場に出回りにくいのが現状です。
物流不動産のプロであれば、登録実績のある既存物件のテナント移転情報を把握しているため、市場に出回りにくい物件のご案内も可能なほか、申請書類の名義変更による登録方法など、実務的な対応策のご提案も可能です。効率よく営業倉庫を探すためには、物流不動産のプロへのご相談がおすすめです。

Q5. 自社要件に合う物件が見つからない場合はどうすればいいですか?
条件に合う物件が見つからない場合は、自社専用のBTS倉庫(Build-to-Suit)を検討することも必要です。物流不動産を取り扱うデベロッパーに相談すれば、施設設備基準の要件を踏まえた仕様の提案や企画段階からのサポートを受けることができます。
まとめ
営業倉庫の登録において、「業務内容に合致した倉庫の選定」と「申請時の書類チェック」が成否の分かれ目です。物流不動産のプロに検討段階の早期から相談し、物件を探していくことで、手間なく条件に合った倉庫を見つけられます。
また、倉庫探しだけでなく、細かい契約内容など物流不動産に関する豊富な経験から様々なアドバイスを受けることで最適な倉庫を選ぶことができます。
物流不動産に60年以上携わってきたシーアールイーでは、ご希望条件に合った倉庫のご紹介が可能です。お客様に最適な倉庫をお選びいただけるようサポートいたします。