スタッフコラム

脱炭素・デジタル時代の物流ビジョン Part② 再エネ供給の爆速拡大から始めよう!

菊田一郎氏の連載コラム「物流万華鏡」

菊田一郎氏の連載コラム「物流万華鏡」

[2] 脱炭素・デジタル社会の前提~再生可能エネルギーで“EX”!(つづき)

◆ スマートグリッド/マイクログリッド

そんなわけ(前回コラムをご覧ください)で脱炭素社会への移行に向け、私たちが今最優先で取り組むべきは、「再生可能エネルギー(以下、再エネ)供給能力の爆速拡大」だ!と私は考えています。

けれど、供給力の拡大だけでは足りません。たくさん作った再エネ電力を、消費地に過不足なく制御しつつ送配電し、共有するための広域ネットワークシステムが必要だからです。それが「スマートグリッド」です。

スマートグリッドは、太陽光・風力発電等の供給システム、送配電ネットワーク、IoT機器、蓄電設備、データ保存装置、機器保守管理システム、そしてこれらを管理するエネルギーマネジメントシステム(EMS)等から構成されます。電力は真夏・真冬などの需要期に需給バランスが崩れると、大規模停電を起こす危険があります。なので電力消費予測のため、道路・鉄道・上下水道等の公共インフラ情報、天候情報、交通情報、イベント時の人の移動情報等を集約し共有することで、効率的で安定的な広域的電力需給を実現させないといけません。わが国の送配電システムはまだまだ脆弱で、再エネ発電施設と合わせ整備には相当な投資が必要と見込まれますが、だからこそこの「エネルギー革命(EX)」で、中期的に「座礁資産」化する化石等燃料業界から、ヒト・モノ・金のリソースを移転・吸収できる可能性があるのです。

これをある地域内で考えた時、分散型電源を連携する狭域小規模電力系統、つまり「マイクログリッド」が構成されます。電源としては太陽光・風力・水力・バイオマス発電、蓄電池、EV(移動型蓄電池となる)などを組み合わせ、通信機能を備えたIoTスマートメーターを各家庭・事業所に設置。使用状況データをリアルタイムに集めてコントロールし、需給調整しながら安定的に電力を供給することを目指します。電源が近傍にある「電力の地産地消」なので、大規模発電所のように長距離・広域送電網を必要としないメリットもあります。

そのイメージとして、資源エネルギー庁の「地域共生型再生可能エネルギー等普及促進事業費補助金」資料のリンクを張っておきますのでご覧ください。

◆ 各家庭・事業所に小規模分散太陽光発電を普及

筆者は講演で、「ウチの自宅の屋根につけた太陽光パネルで、我が家の消費電力の半分以上を賄えている」事実を紹介しました。ならばもし仮に、日本の住宅・事業所の半分くらいにパネルを設置できれば、莫大な発電量が賄えるはず。だから「小規模分散太陽光発電をさらに拡大し、2030年の再エネ比率をもっと高めよう!」と訴えました。

筆者自宅屋根のソーラー発電パネル

その後もあちこちでこの提案をしていたのですが、そんな矢先のつい先日(8/10)、政府は「新築戸建て住宅の6割に太陽光発電設備を設置する」という目標と、その「義務化も検討」する、と発表したんですね!別に私に言われたからしてくれたわけじゃあないに決まってるけれど、提案の直後にこの発表が出たタイミングは、ちょっと嬉しかったです。

現在、大手住宅メーカーの新築戸建て住宅の大半に太陽発電設備が付帯されている半面、われわれ庶民が頼む中小工務店の住宅ではまだまだ少ないとのこと。そりゃそうでしょう、安くなったと言ってもまだ200万円前後かかるでしょうから。なので補助金など支援優遇措置が不可欠だと思います。

この時、どうせ支援してくれるのなら、「蓄電池のペア設置」をぜひ推奨してほしい。それでこそ、昼間しか発電しない太陽光の弱点を補い、需給調整にも連動するマイクログリッドの本格的担い手になれるからです(実はウチも蓄電池は未導入なので、FITの買い取り制度で売電してるのですが、近々、吟味の上で導入し、「エネルギーの地産地消」を口だけでなく、この身で実践するつもりです)。

前回コラムでは、7/21に発表された第6次エネルギー基本計画の素案で、2030年の再エネ比率目標が「36~38%」と、2018年のお寒い計画にくらべ大幅に拡大されたことに触れました。私は最低40%と考えていたので「再エネ推進派が守旧派に押されたか」と書きましたが、直近の報道(毎日新聞8/20付)によると実際は逆で、原発推進守旧派の大勢に対し、小泉環境相と河野行革相が反対して踏ん張り抜き、ようやく「再エネ最優先」を書き込んだのだそうです(-_-;)。

で、今回の比率について専門家に聞くと、「2020年時点で再エネ比率はすでに20%を超えている」「10年後に36~38%とは、放っておいてもできる数字」なのだとか。なのに、莫大なCO2を排出し続ける石炭火力と、無害化まで10万年はかかる超危険物を産み続ける原発(核廃棄物の最終処理方法もそのコストも不明?)がそれぞれ約19%/20~22%と、「やめない宣言」になってしまっている。SDGsの思想に反し、国際社会の理解も得られないのではと深く憂慮しています。

だからこそ!市民の力と政府の支援で小規模分散太陽光発電供給力を爆速で拡大し、前時代の座礁資産を乗り越えよう!! というのが筆者の意見です。

……いやいや、「今までどんな国策の流れで、どれほど予算をつぎ込んできたたのか、分かっとるのか!」「そんな簡単にいくわけないじゃろが!!」とのご批判は承知。けれど、短期的な政治的経済的利害などより、未来の地球と社会をいま守ることが先決なんだ。グレタ・トゥーンベリさんと一緒に、私はSDGsの小さな旗を振り続けます。

◆ テスラの挑戦と実績…やれば、できる

講演ではEXの実践例として、テスラの取り組みを挙げました。同社は2016年、南太平洋の米領サモアのタウ島に大型蓄電池「パワーパック」60基と太陽光パネル5328枚を設置、マイクログリッドを構成して電力の自給自足を支援しています。他の再エネ発電も組み合わせることで、サモア政府は数年内に完全な再エネ社会を実現する計画です。

Tech系YouTuber 倉嶌洋輔氏「TechサプリTesla編/「Teslaを支える3つの事業」より

テスラは家庭用でも太陽光発電設備「ソーラールーフ」と蓄電システム「パワーウォール」を、日本含む各国に販売展開しています(同社は単なるEVメーカーなどではない。地球社会の持続可能性に貢献することをパーパスとする企業であって、EVもソーラーもその1つの手段でしかない)。だから、やれば、できる。私はそう思います。

[3] 脱炭素・デジタル社会の物流・モビリティDX

◆ IoT/V2X

続いて講演では、上のタイトルでMaaSや自動配送車・ドローン、EV/FCVなどの事例を挙げました。その中から、講演レポートでは触れていなかったデジタル社会のキーテクノロジーであるIoT、とりわけ「V2X」について補足しておきます。

V2X(Vehicle to X) とは、車両(V=コネクテッドEV)とX(他の何か=車両や歩行者、インフラなど)との相互連携システムの総称で、リアルタイムデータ授受を可能にすることで自動運転も支援する技術。5Gでの超高速同時多数接続が期待されます。資料に書いた通り、
①V2V(車両同士=車車間通信)
②V2I(対インフラ)
③V2P(対歩行者など人)
④V2N(対ネットワーク)
⑤V2H(対住宅)
⑥V2B(対ビル)
⑦V2G(対電力網;Grid)・・・などがあります。

その実現には、車両すべてに加え、受ける側にも各種センサ、カメラとデータを授受できる標準通信システムが必要なので、ちょっとばかり投資と時間はかかりますが、その可能性は極めて大きい。うち前項のスマート/マイクログリッドと直接連携するのが⑤⑥⑦で、EVの蓄電池を非常時など地域社会の電力網に直結し、小規模分散電源として需給調整に活用しようとの構想を裏打ちします。

もう1つ私が期待するのは、②V2Iと④V2N。インフラ連携では信号、道路下、電柱・標識などのセンサと連携させることで現在の道路交通状況が手に取るように分かるようになるので、信号の時間調整や進入禁止の一時設定などで渋滞・集中流量回避が可能になる。また車載カメラで道路や橋、トンネルなどインフラの破損・異常状況が検知できれば、迅速的確なメンテナンスによる危険回避ができるでしょう。

gooニュースより図を引用、定義は同記述を参考に筆者作成

同じく車載カメラでは、店舗や施設など地図上のランドマークの新設・撤退状況ほかが検知できることに期待しています。それをナビゲーションマップの更新データにできるから…ナビ画面上に出ている店舗などがなくなってて「道を間違えた」なんてこと、あるあるでしょう?他にも道路や進入ルール等標識の改廃を含め、今までは地図会社が専用カメラを積んだ車を全国・世界各地に隈なく走らせて収集し・更新していた実態データが、日々走りまわる何十万台ものコネクテッドカーから自動収集可能になれば、そんな手間とコストが一切不要になるのではないでしょうか(ビッグデータをAI分析にかけて真偽判定し地図を日々、自動メンテナンス可能にしたい)。

このデータは、地図会社や公共団体に有料で販売することもできるはず。データの提供者にはETC的な仕組みで「逆課金」、ごく少額でもデータ料金を提供の対価として還元できるようにするのです。ジェレミー・リフキンはこの収受システムで、「儲からない」と嫌われているスマートシティの運営資金をねん出する提案をしています。

◆ 脱炭素・デジタル社会の物流は

以上、私がスマートシティ/スーパーシティ構想をモデルに、2030年にはかくあるべしと考えた「脱炭素・デジタル社会の物流」のざっぱくなイメージでした。

脱炭素については、まず何よりも再エネ供給力の爆速拡大で、「再生可能エネルギーで物理的・電気電子的に駆動する物流」の基盤を構築する。同時にEV/FCV化と、省エネ設備・施設化を徹底する、という手順になるでしょう。

その他の具体的な打ち手は、CREフォーラム/セミナーレポート(にも引用されている当日資料の「③物流へのSDGsマッピングとテーマの落とし込み(キクタ案①②)」に記載した通りなので、重ねては触れません。

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…今年の夏も、国内では猛暑の直後に大雨・洪水被害が続発。世界に目を転じれば、欧米各地で50℃近い酷暑を記録し、山火事も頻発、ドイツ・ベルギーでも大変な洪水が発生しています。凶暴化する気候変動は、誰のせいなのか?

おりしも、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は8月9日、異常気象と地球温暖化の相関関係を科学的な見地から示した「第6次評価報告書」を発表しました。その中で大きく注目されたのが、まず「地球温暖化の主因が人間活動にある」と改めて確認の上、今回は「疑う余地がない」と断定したこと(反対派からは「そんな証拠はない」との声が消えていなかった)。そう、気候変動は、私たち自身のせいなのです。

そしてもう1つ、「このままでは産業革命期以来の世界の気温上昇が、2021~40年の間に1.5度(前回述べたティッピングポイント)に達する」との予測を示したこと。なんと18年時点の想定より、年限が約10年も早まってしまったのです!
もはや、待ったなし。物流分野に携わる私たち産業人としては、この「地球環境保全/気候変動の抑止」と合わせ、「働く人の環境保全」を両輪としてチャレンジし、SDGsをわがゴールとして、「あるべき社会」の実現を下支えして行こう!…それが私の伝えたかったメッセージです。             

バックナンバー

物流DX① ”物流DX”で 会社と物流を変えますか?
物流DX② ”物流DX”で 会社と物流を変えますか?(その2)
脱炭素・デジタル時代の物流ビジョン Part① 「スーパーシティ」の物流像とSDGs

執筆者 菊田 一郎 氏 ご紹介

執筆者 菊田 一郎 氏 ご紹介

エルテックラボ L-Tech Lab
代表 菊田 一郎 氏

1982年、名古屋大学経済学部卒業。83年流通研究社入社、90年より月刊「マテリアルフロー」編集長、2017年より代表取締役社長。2012年より「アジア・シームレス物流フォーラム」企画・実行統括。著書に「先進事例に学ぶ ロジスティクスが会社を変える」(白桃書房、共著)、「物流センターシステム事例集Ⅰ~Ⅵ」(流通研究社)、ビジネス・キャリア検定試験標準テキスト「ロジスティクス・オペレーション3級」(中央職業能力開発協会、11年・17年改訂版、共著)など。2017年より大田花き㈱ 社外取締役(現任)。2020年6月1日に独立、L-Tech Lab(エルテックラボ、物流テック研究室)代表として著述、取材、講演、アドバイザリー業務を軸に活動開始。同6月より㈱日本海事新聞社顧問、同後期より流通経済大学非常勤講師。

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