マルチテナント型倉庫のメゾネット区画の有効性とは|小さなBOX型倉庫の視点で捉えた真価
執筆の背景
マルチテナント型倉庫を検討している中では「メゾネット区画は使いづらい」「できればワンフロアの方が良い」。
そんな声を、物流現場から聞くことは少なくありません。
確かに、上下階の搬送や動線の整理など、多層構造ならではの課題は存在します。
しかし、実際の運用を見ていくと、庫内設計次第で、BOX型倉庫のような工程分離や動線整理において利点を発揮し、 むしろメゾネット区画の方が効率的に機能するケースもあります。
本記事では、構造と運用設計の観点から、マルチテナント型倉庫でのワンフロア利用、BOX型倉庫、そして、その中間にあるマルチテナント型倉庫でのメゾネット区画を比較の軸に据え、メゾネット区画でも合理的に機能する運用や、考え方について整理します。
BOX型倉庫・マルチテナント型倉庫のワンフロアの中間にあるメゾネット区画という選択
BOX型倉庫は、1社専用で独立した倉庫運営ができ、各階バースがない分保管面積が多くとれる構造が特徴です。マルチテナント型倉庫は1棟を複数企業が契約区画を利用する形態で、共用部を分け合うことで、必要面積やコストに柔軟に対応できる点が特徴です。マルチテナント型倉庫におけるワンフロア利用は、1階またはバースが備え付けられている階を契約することで平屋の倉庫のように運用できる点が特徴です。
一方、マルチテナント型倉庫におけるメゾネット区画は、1棟内に上下接続可能な多層階の占有区画を持つ構成で、マルチテナント型倉庫の利便性がありながらも、自社専用の動線や内部搬送を確保できる点が特徴です。また、セキュリティレベルを高く保てるという点でBOX型倉庫と共通しており、高単価商材や機密性の高い商材の保管に適した形態といえます。
バースやカフェテリアなどの共用部の利便性とBOX型倉庫の独立性、その両者の利点を併せ持つ形態がマルチテナント型倉庫のメゾネット区画にはあるといえます。
例えば、BOX型倉庫ほどの面積は必要ないが、3層4層では上下搬送のデメリットが多い、または、ワンフロア区画の持つバース数では過大で保管に面積を回したいなどといった場合に、マルチテナント型倉庫のメゾネット区画は使い勝手と独立性を両立できる現実的な選択肢となります。
多層階区画における各階バースの留意点
倉庫運営の理想は、作業効率の高いワンフロア区画です。しかし輸配送先を考慮して立地条件を優先する場合、マルチテナント型倉庫の多層階区画を選択せざるを得ないケースもあります。
多層階区画の中でも、各階にバースがある場合、ワンフロアの倉庫運営に近い設計が可能な反面、運営上いくつかの留意点もあります。
想定しておきたいポイントとしては、例えば次のような点が挙げられます。
・各階で入出荷を行う場合、それぞれに人員配置が必要
・エレベーターがなく上下搬送を行う場合、追加投資が必要
・保管・作業面積に対して利用バース数が少ない場合、バーススペースの稼働率を高める工夫が必要
各階バースの多層階区画でも、エレベーターが組み込まれていれば、上下搬送設備の追加は自社の運営方針に応じて判断できます。一方で、メゾネット区画は、追加の設備投資なしで上下搬送を確保できる点が強みといえます。
メゾネット区画の運用設計と利点
メゾネット区画というと、ワンフロアに比べて運営効率が劣るとみなされることが少なくありません。上下搬送に伴う課題が指摘される一方で、すべてのメゾネット区画が非効率であるとは限りません。むしろ、運用をBOX型倉庫のように分離・整理された構造として設計することで、メゾネットならではの特長を活かし、現場運用と経営の両面で高い合理性を発揮することができます。
| 利点1 | 工程分離による「混線しない」レイアウト |
|---|---|
| 利点2 | 生産性と稼働率のバランスのとりやすさ |
| 利点3 | コンパクト動線が生む効率性 |
| 利点4 | 固定投資を抑えつつ、変動への対応力を高める |
工程分離による「混線しない」レイアウト
メゾネット区画の利点は、上下階で作業工程を分けられる点にあります。上下階の役割を分けた運用を前提とすることで、日常的な荷動きにおいて支障のない縦動線性能を確保することができます。
広いワンフロアでは、コンベヤやソーターの導入によって設備が作業動線を遮ってしまうことがあり得ますが、メゾネット区画では工程を階層ごとに分離できるため、レイアウトがシンプルになり、倉庫全体の処理能力を発揮しやすくなります。
実際に、希望エリア内に求める規模のワンフロア区画が存在しなかった企業が、マルチテナント型倉庫の各階バースの区画を2層一括で借り上げ、上階のバース床をかさ上げして保管スペースとして活用することで、作業効率を最大化させたケースもあります。
生産性と稼働率のバランスのとりやすさ
一般論として、階層が増えると上下搬送に待機時間が生じ、生産性が低下しますが、その中でもメゾネット区画は2層構造により移動距離を抑え、搬送効率を保ちやすい点が特徴です。
例えば、TCのようにトラックの発着頻度が高い場合、多くのバース数が必要ですが、入出荷が限定的な場合、バースを使いきれず、ネステナを組んで保管スペースとして活用しているケースも多いかと思われます。
その点メゾネット区画では、必要なバース数は確保しつつ、床を元より保管スペースとして運用できるため、借りている面積を無駄なく活用しやすい構造と捉えることができます。
コンパクト動線が生む効率性
メゾネット区画では各フロアの面積がワンフロアと比べてコンパクトな分、作業者の移動距離を短く保つことができます。棚とバース、加工スペースと検品場といった主要ポイント間の距離が縮まることで、1件あたりの歩行時間を削減し、1人あたり生産性の底上げにつながります。
さらに、動線が単純でフロアごとの役割がはっきり分かれているため、新人や短期スタッフでも動線を把握しやすく、立ち上がりまでの期間を短縮できるという点での利点もあります。
ゾーニングと在庫コントロールのしやすさ
フロア単位でのゾーニング設計にもメゾネット区画の利点を活かせます。例えば、多頻度品や短納期対応が求められる商品をバース階に集約し、低頻度品をバース階以外にまとめることで、よく動く在庫ほど近く・早く、滞留在庫は奥・上へといった在庫配置を、物理的なレイアウトで実現しやすくなります。
このようなゾーニングは、棚割りやロケ管理のルールを分かりやすくし、誤ピックやピック迷子の削減にもつながります。上階・下階で在庫の性格を切り分けることで、棚替えやレイアウト変更もフロア単位で行いやすく、SKU増加や取扱商品の入れ替えにも柔軟に対応できます。
固定投資を抑えつつ、変動への対応力を高める
メゾネット区画の利点は、固定的なマテハン投資に依存せず、需要に応じて運用を柔軟に組み立てやすい点にあります。
ワンフロア・超大型の倉庫で高い生産性を維持しようとすると、大型ソーターや長距離コンベヤなど、初期投資と固定費のかかる設備に依存しがちです。
一方、メゾネット区画は上下階で工程分離されたコンパクトな動線をつくることで、必要に応じた中規模の設備と人員調整で十分な処理能力を確保できます。
需要が読みにくい事業や、季節波動の大きい荷物を扱う場合、設備投資を大きくしすぎると、需要が減ったときに固定費が重荷になります。メゾネット区画は、高額な固定設備に依存せず、可変費中心で運用を調整できるため、需要変動リスクや設備過剰投資リスクを制御しやすく、倉庫の運営上のリスクを小さくできるという利点があります。
このような柔軟に運用を組み替えやすい特徴は、BtoB卸のようなSKU数が多い業態や、製造業の中間拠点など複数の工程を並行して処理するような業態などに適しています。一方で、超大量処理を前提とするフル自動倉庫の場合は、ワンフロア区画の方が適する場合もあります。
メゾネット区画だからこそ成立するバランスの良い倉庫
メゾネット区画=非効率という固定観念ではなく、どの規模・どの業態で、どう使うかという視点で見直すと、メゾネット区画はコンパクトなBOX型倉庫として、現場と経営の両方にとって合理的な選択肢になり得ます。
本記事を通じて、メゾネット区画だからこそ実現できる運用の具体的なイメージを持っていただくための一助となれば幸いです。