物流不動産とは?増加する背景と今後の展望を解説
物流不動産とは、商品の保管や配送を効率的に行うために設計された倉庫や配送センターなどの不動産のことを指します。近年のECの急成長や即日配送ニーズの高まりに伴い、物流不動産の数も年々増加しています。数ある物流不動産の中で、自社に最適な物流不動産を選ぶには、どのような点に注意すればよいのでしょうか。本記事では、物流分野に強みを持つシーアールイーが、物流不動産についての種類や選ぶ際のポイントを、独自の切り口でわかりやすく解説します。
物流不動産とは
物流不動産とは、商品の保管・仕分け・流通加工・配送などの物流業務を行うために利用される、倉庫や物流センターなどの施設を指します。
物流不動産の利用形態は、大きく「自社所有型」と「賃貸型」に分かれます。自社所有型は、荷主企業や物流会社が自ら土地・建物を保有し、自社専用の物流拠点として運営する形態です。一方、近年主流となっているのが、デベロッパーや不動産会社が開発した施設を企業へ貸し出す「賃貸型物流不動産」です。
賃貸型物流不動産では、テナント企業が必要な面積を借りて利用し、契約条件に応じて賃料を支払います。自社で土地取得や施設開発を行う必要がないため、初期投資を抑えながら物流拠点を確保できる点が特徴です。また、事業拡大や物流網再編に合わせて拠点を見直しやすいことから、多くの企業で活用が進んでいます。
さらに、物流不動産は長期契約となるケースが多く、安定した賃料収入を見込みやすいことから、不動産ファンドやREIT(不動産投資信託)においても重要な投資対象となっています。EC市場拡大を背景に物流施設需要が高まっていることもあり、物流不動産は近年、投資市場でも存在感を強めています。
物流不動産市場の現状
近年の物流不動産市場は、EC市場の拡大や物流網見直しの動きを背景に、成長が続いています。特にコロナ禍以降は、EC需要の増加に加え、在庫確保や配送リードタイム短縮への関心が高まったことで、物流施設需要が拡大しました。
こうした需要拡大を受け、大手デベロッパーだけでなく、商社や保険会社など異業種からの参入も進んでおり、物流不動産市場は活況を呈しています。その結果、物流施設の新規供給も継続的に増加しています。
以下のグラフは、シーアールイー独自調査による、日本国内主要エリアにおける賃貸大型物流不動産の年間竣工面積推移を示したものです。2026年の数値は、2026年3月時点の調査に基づく想定値を含みますが、10年前と比較すると年間竣工面積は約2倍拡大していることが分かります。
※日本国内主要エリアは、首都圏・関西圏・中部圏・九州圏を指します。なお、同エリア内であっても、シーアールイー独自のエリア定義により一部対象外となる物件があります。
出所:株式会社シーアールイー| 倉庫・物流不動産 マーケットレポート調査情報をもとに作成
物流不動産が増加した背景
ここからは、物流不動産が増加している背景について詳しく解説いたします。
EC(電子商取引)の急成長
EC市場の拡大により、消費者は時間や場所を問わず商品を購入できるようになり、物流にはこれまで以上のスピードと柔軟性が求められるようになりました。特に、即日配送や翌日配送といった短納期サービスの普及は、物流体制そのものの高度化を企業に迫っています。
こうしたニーズに対応するため、企業は配送リードタイムを短縮できる都市近郊や主要消費地に近いエリアへ物流拠点を配置する必要性を強めています。その結果、広い保管スペースに加え、仕分け・出荷作業を効率化できる設備を備えた大型かつ高機能な物流不動産への需要が急速に拡大しました。
ECの成長は、物流の量的拡大にとどまらず、施設スペックや立地条件に対する要求水準を引き上げ、物流不動産市場の拡大を後押しする主要因となっています。
建物の老朽化と機能更新
既存の物流倉庫の老朽化が進む中で、耐震性能や断熱性能、セキュリティといった基本的な施設機能が、現在の物流オペレーションの要求水準を満たせなくなるケースが増えています。
特に日本では、高度経済成長期以前(1970〜1980年代以前)に建設された倉庫も多く、築40年以上を経過した施設が一定数存在しています。これらの老朽倉庫は、設備更新や耐震補強などのリノベーションによって一定の機能改善は可能であるものの、多額のコストを要するうえ、構造上の制約から最新の物流オペレーションに適合しない場合も少なくありません。そのため、免震・耐震構造を備え、最新のマテハン設備や高水準のセキュリティを導入できる新設の高機能物流施設への建て替え・投資が進んでいます。
ESG・環境対応
近年、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)を重視する、いわゆるESGの考え方が企業活動や投資判断において重要性を増しています。これに伴い、物流分野においても環境負荷の低減や社会的責任を意識した施設への需要が高まり、環境対応型物流不動産への投資および開発が拡大しています。
具体的には、太陽光発電などの再生可能エネルギーの活用や、高効率な空調・照明設備、断熱性の高い建材を採用した省エネルギー設計など、環境性能を重視した物流施設の供給が増加しています。これらの取り組みは、CO₂排出量の削減に寄与するだけでなく、エネルギー使用量の抑制による中長期的なランニングコストの低減という点でも企業にとって大きなメリットとなります。
こうした環境性能は、建物の省エネルギー性能を5段階で評価する「BELS評価」や、建築物の環境品質と環境負荷を総合的に評価する「CASBEE-建築」といった第三者認証制度によって客観的に確認することが可能です。これらの認証は、建物の信頼性や資産価値を高める指標としても活用されており、持続可能な物流不動産開発を進めるうえで欠かせない要素となっています。
物流不動産業界の今後
物流不動産市場は、今後も中長期的な成長が続くと見られています。背景には、EC市場の拡大に加え、配送サービス高度化への対応ニーズがあります。実際に、経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」によると、2024年の国内BtoC-EC市場規模は26.1兆円となり、前年比5.1%増加しました。BtoB-EC市場も514.4兆円まで拡大しており、商取引のデジタル化が継続的に進んでいます。こうしたEC需要拡大に伴い、物流現場では「即日配送」「翌日配送」「時間帯指定配送」などへの対応が一般化しています。また、ECでは多品種・少量出荷が増えるため、従来以上に高い出荷処理能力や柔軟なオペレーションが求められるようになりました。
そのため近年の物流施設では、単なる保管機能だけでなく、高床式バースやランプウェイ、自動化設備、流通加工スペースなどを備えた高機能化が進んでいます。特に都市近郊では、配送リードタイム短縮を目的とした大型マルチテナント型物流施設の開発も増加しています。
物流不動産を選ぶ際のポイント
適切な倉庫を選ぶことは、物流コストの最適化や顧客サービスの向上させ、事業の競争力強化につながります。以下では、物流業務の成否を左右する選定時に必要な立地条件、設備、賃料、人材確保などのポイントについて解説します。
①立地
立地は入荷元や出荷先、配送範囲、サービスレベルなどを考慮する必要があります。高速道路や幹線道路へのアクセスが良好であれば、輸送効率が高まることから、リードタイムの短縮や配送コストの削減にも繋がります。また、施設へのアクセスが良く、通勤しやすい立地であれば、人材も確保もしやすく、結果として安定したオペレーションが可能となります。
②設備
天井高や床荷重が十分であったり、入出庫しやすいバース設計であれば、その分作業がしやすくなり、作業効率を上げることができます。さらに、セキュリティや施設内動線、共用部設備など倉庫で働く人の環境面が整っていると安全性や就労の継続性が高まります。
③柔軟性
施設における柔軟性は、将来的な事業成長への対応力を左右する重要な視点です。例えば、施設の構造が柔軟であれば、内部レイアウトの変更によって業務内容の変化に対応しやすくなります。また、自動化設備の導入余地があれば、将来の人手不足対策や生産性向上にもつながります。このように、今後の事業フェーズの変化や、取り扱う商品が増えたときに、柔軟に対応できる不動産を選ぶことは企業にとって重要です。
まとめ
物流不動産はECの急拡大や施設の高機能化を背景に供給量は増加しています。
物流不動産は保管や配送を担うだけでなく、付加価値の高いサービスを提供できる点が大きな魅力です。マルチテナント型やBTS型など多様な形式があり、企業のニーズに合った最適な物件を選ぶことができます。
物流不動産をお探しの際は、市場データを客観的に把握することで、拠点戦略の検討をより具体的に進めることができます。
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