アパレルECとは?最新の市場規模や種類、業務内容について解説
アパレル分野でも、ECの活用が増えてきています。
この記事では、アパレルECの基礎知識や種類、業務内容などについて解説します。
アパレルECの市場規模とEC化率
経済産業省が調査した電子商取引に関する市場調査によると、2023年度における電子商取引の衣料・服飾雑貨の市場規模は、前年度比約4.75%増の2兆6,712億円と、堅調な伸びを示しました。EC化率は22.88%となり、前年度から1.32%ポイント上昇しました。新型コロナウイルス感染症拡大の影響下における急成長期と比較すると、成長率は若干鈍化しているものの、市場は引き続き拡大傾向にあることが確認されました。
アパレルECの種類
一口にアパレルECといっても、その種類はさまざまです。ここでは、アパレルECサイトの種類について解説します。
自社EC
自社ECとは、ブランドが自らドメインを取得して独自に運営するECです。自社ECでは自社の商品をオンライン上で直接販売できるため、ブランド独自の魅力を消費者に伝えやすい点が特徴です。また、顧客情報を直接取得・管理できるため、効果的な販売施策を展開しやすいといえるでしょう。SNSの活用や実店舗との連携などを打ち出している企業も多いです。しかし、独自に運営を行うためサイト構築や運用に関する初期投資、継続的なメンテナンス費用などが必要になります。
モール型EC
モール型ECとは、複数のブランドが集っているECのことです。代表的なモール型アパレルECは、ZOZOTOWNや楽天市場などが挙げられます。モール型ECは高い集客力が見込めることや有名なモールに出店することによるブランドの信頼性向上などが利点としてありますが、他ブランドの商品も多数出品されており、比較も容易なため、価格競争が起こる可能性があります。また、マーケットプレイスへの出店という形であることから出店料などのモール利用料が発生するほか、モールのルールなどにより、独自性を出しにくいため、ブランディングに制限がかかってしまうことも考慮が必要です。
フリマアプリ
近年ECチャネルの一つとして個人間EC(CtoC-EC)が急速に拡大しています。そのなかでも、フリマアプリは、ユーザー同士がファッションアイテムを売買できるプラットフォームの一つとして挙げられます。
アパレルECの課題
ここでは、アパレルECが抱えている課題について解説します。
ユーザーの利便性
オンラインでは顧客が実際に商品を手に取ったり試着したりすることができないため、サイズ感や着用イメージを正確に伝えることが困難です。この課題は高い返品率につながり、顧客満足度の低下や運営コストの増加を引き起こします。ユーザーの利便性を向上させる対策として、詳細な採寸情報の提供、360度画像や動画の活用、バーチャル試着システムの導入などが考えられますが、これらの実装にはコストと技術的課題が伴います。
在庫の一元管理
アパレル商品は色やサイズのバリエーションが多く、季節ごとのアイテム入替や流行の影響を受けやすいため、在庫管理が非常に複雑です。過剰在庫は資金繰りの悪化や値下げによる利益率低下を招き、反対に在庫不足は機会損失につながります。さらに、実店舗をもっている場合や複数のアパレルECサイトを運営している場合には、さまざまなリスクを回避するためにも、一元管理システムの導入は有効です。
集客
アパレルEC市場には多くのブランドが参入しており、競争が激化しているため、集客が難しくなってきています。膨大な数のブランドのなかで自社商品のブランドの世界観や価値を伝えることが課題となります。この課題に対して、SNSやライブコマース、オンラインとオフラインを融合したオムニチャネルの活用、パーソナライズされたコンテンツ提供などの独自のブランディング戦略に力を入れ、差別化を図る取り組みが求められます。
アパレルECに関わる業務内容
アパレルECに関わる業務内容は多岐に渡ります。ここでは、業務内容について解説します。
商品調達
アパレルECとして、まず行うのは販売する商品の調達です。
どのようなコンセプトのショップにするのか、取り扱うアイテムを策定し、そのうえで外部から仕入れる、または自社ブランドとして商品製造するケースがあります。
アパレルは1つの型につきカラー、サイズ展開があり、かつ春夏秋冬により商品の入替も発生します。また、流行の移り変わりも早いので売れ残った在庫が次の販売シーズンに売れるとは限りません。
事業計画を十分に練った上で調達数量を決めることが求められます。
マーケティング
自社ブランドの認知度を高め、売上を伸ばすためにはマーケティングが必要です。例えば、オンライン広告を出稿することで広範囲に情報を拡散する方法や、SNSを活用して商品やブランドの魅力を直接ユーザーに伝える方法が考えられます。
ささげ
アパレルに限りませんが、サイト上で商品の魅力を適切に伝えることは非常に重要な要素です。
「ささげ」とは、撮影・採寸・原稿の略で、商品の魅力を的確に伝えるための一連の作業を指します。アパレルECでは、アイテムを購入したくなるような写真撮影や正確なサイズ表示、生地や着心地など商品の特徴を伝えるライティングが重要です。
また、写真撮影においても、従来のモデルやトルソーを用いた撮影もあれば自動撮影や360℃撮影などクオリティ向上の設備も登場しています。
これらのささげ業務によって、ユーザーの抱く商品イメージと実物のズレが少なくなることは売上だけでなく、後述の返品・交換対応の減少にもつながるでしょう。
受注管理
受注管理は、注文をスムーズに処理するための一連の業務です。具体的には、注文の受付やメールの送付、在庫の引き当てなどの業務が挙げられます。あらかじめ業務の流れを整理しておくと、各業務がスムーズに進むでしょう。また、受注管理システムの導入もおすすめです。
配送・在庫管理
商品が注文された後の配送や在庫管理も業務の一環です。商品を梱包して発送する作業や、在庫状況を正確に管理する作業も行います。適切なタイミングで在庫データの更新を行うことにより、在庫切れを防ぎつつ、適切な量を仕入れられます。
返品・交換対応
アパレルECは実店舗と異なり実際の試着が出来ない分、サイズ交換などの返品・交換対応が他のジャンルよりも高くなりやすい特徴を持っています。
返品・交換の対応基準を定め、ユーザーとの適切なコミュニケーションが求められます。
アパレルECの運営に必要なスキル
ここでは、アパレルECの運営に必要なスキルについて解説します。
ささげ
前述のとおり、「ささげ」とは撮影・採寸・原稿の略でユーザーに商品を伝える業務です。実店舗のように商品を手に取ることができない部分をささげのスキルにより補い、また、店頭では伝えにくいメッセージにより商品がもつ魅力を更に引き出すことが可能となります。
SNSの知識
多くのアパレルECが、InstagramやXなどのSNSを活用して消費者との接点を増やしています。各SNSの特性や運用方法を理解し、効果的な発信を行うことが求められます。
分析力
ECサイトの運営では、アクセス数や流入経路、商品ページの閲覧数などのデータを把握し、分析する能力が重要です。季節による商品の入れ替わり、また外気温などの外部環境によってアパレルはアイテムの売れ行きが異なります。数字をもとにユーザーの行動を理解し、サイト改善や販売戦略を策定するためのスキルが、アパレルECには欠かせません。
マーケティングの知識
ECサイト運営には、Web広告、SEO、UX設計の知識が重要です。Web広告とSEOの知識は、サイトの露出を高め、効果的な集客に役立ちます。UX設計の理解は、使いやすいサイト構築につながり、サイト離脱率低下と購入率向上をもたらします。これらの知識を活用することで、顧客満足度が向上し、リピート購入やLTV(顧客生涯価値)の最大化につながることで、売上と収益性の向上が期待できるでしょう。
Photoshop・Illustratorのスキル
撮影した写真を加工する際にはPhotoshop、ECに誘導するための広告などを作成する際にはIllustratorなどの編集ソフトを用いるため、ソフトを扱うためのスキルも必要です。このスキルは、採用条件として設定されることも多く、実務で役立ちます。
業界経験
アパレル業界での経験があると、消費者のニーズを深く理解できるため、商品展開や問い合わせ対応などに役立ちます。経験があることで、顧客心理を踏まえた戦略立案も行いやすくなります。
アパレルECを成功させるポイント
ここでは、アパレルECを成功させるポイントについて解説します。
動画・画像を効果的に活用する
アイテムの魅力を十分に伝えるためには、画像・動画を効果的に活用する必要があります。ECサイト上でおすすめのコーディネート例を、画像や動画を用いて紹介する取り組みも昨今では当たり前になってきています。
ブランディングに力を入れる
ファッションは好みが分かれる分野であるため、ペルソナを明確にする必要があります。明確にしたうえで、ペルソナを引き込むための独自性や提供価値を打ち出しましょう。ブランディングが成功すれば、競合との差別化が図れてユーザーの注目を集めやすくなり、集客アップにつながるほか、ブランドのファンが形成され、ロイヤルカスタマーの獲得が見込めます。
自社ECサイトを立ち上げる
アパレルECを成功させるポイントの1つは、自社ECサイトを立ち上げることです。ECモールは競合との差別化が難しく、競争が激しいのが実情です。自社ECサイトであれば、競争を避けつつ自由度の高いサイト構築が実現できます。
オムニチャネル化を図る
実店舗を所有している場合には、オムニチャネル化を図ることもポイントになります。オムニチャネルとは、実店舗とECサイトを連携させる取り組みを指します。オムニチャネル化により、顧客データや在庫情報などをまとめて管理できるようになります。これにより、顧客の購買行動や嗜好をより詳細に分析できるため、個々の顧客に最適化された販売施策を展開できるようになり、結果的にアップセルやクロスセルの実現につながります。
アパレルECを運営するなら倉庫の活用が欠かせない
アパレルECを運営する際には、いかに物流倉庫を活用するかも重要な観点です。アパレルに限らず、ECにおいて物流機能は競合との差別化や消費者に対する強みを打ち出す上で重要な要素になっています。以下では、物流業務をアウトソーシングする場合と、自社にて行う場合について、それぞれの利点を説明します。
物流業務をアウトソーシングする場合
物流業務をアウトソーシングする場合の利点は以下の3点です。
・専門業者のノウハウを活用し、効率的な物流管理が可能
・繁忙期や需要変動に柔軟に対応
・初期投資を抑え、変動費化によるコスト管理が容易
物流業務を外部委託することで、コア業務にリソースを集中させられるため、事業の成長期での活用が有効です。
物流業務を自社で行う場合
物流業務を自社で行う場合の利点は以下の3点です。
・在庫管理や出荷プロセスを直接コントロールが可能
・自社のニーズに合わせたカスタマイズが容易
・長期的には固定費の削減につながる可能性がある
自社で倉庫を借りて物流業務を運営することで、初期費用を抑えながら状況に応じて柔軟に対応できる体制が整います。また、注文数が不安定で先の予測が難しい段階では、自社で物流業務を行う方が、コスト面で有効な場合も考えられます。
まとめ
アパレルECについて、市場規模や種類や課題、成功させるポイントなどを解説してきました。アパレルECの運営において、自社や市場の状況、将来的な物流戦略を考慮した上でベストな物流倉庫を選択することが重要です。事業の立ち上げ期や成熟期に伴い自社での物流業務運営に切り替える際は、物流拠点や貸し倉庫をお探しの際は「CRE倉庫検索」をご活用ください。
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