スタッフコラム

“嫌われた”食品物流、 途絶の危機を乗り越える!~(前編)加工食品/ビール物流の持続可能化への戦い~

菊田一郎氏の連載コラム「物流万華鏡」

菊田一郎氏の連載コラム「物流万華鏡」

ここ数年、食品物流にかかわる荷主企業のリーダーたちから、「これじゃ商品を運んでもらえなくなる!」という危機感に満ちた声が、あちこちから聞かれるようになりました。加えて、先日筆者がCREフォーラムでお話しし、事務局が講演のまとめ記事を掲載してくれた「物流2024年問題」(※1)が掛け合わせになって、残された時間は、もはや「ない」、という切迫した情勢にあります。そう、このままでは「食品物流は持続可能じゃない!(途絶する!!)」かも……なのです。

そこで! 今回と次回の2回にわたり、「“嫌われた”食品物流」の現状を正視し、解決策を探ることにします。今回はまず、①加工食品業界と、②ビール・飲料物流の動きから…。

加工食品物流は嫌われている

去る3月に開催された文藝春秋・物流 DX カンファレンスで、登壇したキユーピー株式会社ロジスティクス本部の前田賢司本部長は、「加工食品物流が嫌われる理由」として以下の点を挙げていました。いえ、自虐ギャグなどではない、シンケンなお話です。

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・短い納品リードタイム、
・夜間荷役作業
・長時間待機、納品附帯作業
・多頻度検品、納品ロット指定
・非効率で不合理な悪しき商習慣
・小ロット多品種多頻度納品…
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う~ん…確かに、こんな物流の仕事なら、あんまりやりたくないかもですね。ドライバーにも運送会社の社長にも、「できれば避けたい」と思われていそうです。そんな加工食品物流の問題点を「ドライバーの長時間労働が強いられる要因」として一覧にまとめた資料が、国交省の「食品に係る物流効率化実施の手引き」に載っていたので、引用させてもらいます(図表1)。

図表1 食品サプライチェーンでトラック運転者の長時間労働を招く要因

図表1 食品サプライチェーンでトラック運転者の長時間労働を招く要因

(出典)国交省「食品に係る物流効率化実施の手引き」

ここまで書き出すとミもフタもない気がしてきますが、裏付けるデータもあります。農水省の「農産品物流対策関係省庁連絡会議」資料によると、トラックドライバーの労働時間は「農水産品」分野が平均12時間32分と最長で、「加工食品と酒・飲料」を含む軽工業品でも12時間16分と、他の品目のドライバーと比べて長いことが示されました(図表2)。特に荷役時間、運転時間が長く、別の調査資料では30分以上の待ち時間が発生した件数も、食品物流での発生件数が多くなっているのです(図表3)

図表2 トラックドライバーの輸送品類別・平均拘束時間

図表2 トラックドライバーの輸送品類別・平均拘束時間

(出典)農水省「農産品物流対策関係省庁連絡会議 資料」より

図表3 30分以上の待ち時間が発生した件数

図表3 30分以上の待ち時間が発生した件数

(出典)「トラック輸送における取引環境・労働時間改善中央会議 資料」より

嫌われないために、持続可能化のために

その未来を見通し腹を固めたキユーピーでは既に2010年代前半、加工食品業界でもっとも早い時期から本気の改革に乗り出し、①モーダルシフトによる業界の垣根を超えた共同幹線輸送、②日本アクセスとキユーピーの連携による簡易検品レス化で持続可能な食品物流へ、③メーカー・卸間の協働による納品リードタイム延長…という果敢なチャレンジで成果を挙げてきたのです。

上記の中でもとりわけ高いハードルだったのが、③項「納品リードタイムの1日延長(翌日納品から翌々日納品へ)」でした。筆者が編集者時代、キユーピーさんに取材して、受荷主である食品卸の理解を得ながら一歩ずつ、この取り組みを懸命に進めてきた苦労話を、前田さんの前任者・藤田さんから詳しく聞いて報道したのはもう、4年前のこと。そうした先覚者たちの戦いによって、今は相当数の卸企業がLT+1日に理解を示していると聞きます。

立ち上がったのは同社だけではありません。味の素、ハウス食品グループ本社、カゴメ、日清製粉ウェルナ、日清オイリオグループという食品メーカー5社の出資により、味の素物流、カゴメ物流サービス、ハウス物流サービス(事業の一部)の各物流子会社の物流事業を統合して2019年4月、「F-LINE株式会社」が誕生しました。この取り組みを率いた味の素物流部の堀尾部長に、立ち上げ前の時点で取材して書いた私の記事を、「各界への理解推進にすごく役立ったよ!」と堀尾さんに喜んでもらえたのは、編集者冥利に尽きる思いでした。

同じ着荷主をもつ同業他社と、製品物流を統合してしまう、というのは究極の物流効率化施策。でもそのためには、筆者がかねてから唱える「物流共同化の三原則(3つの前提)」、つまり①モノと②情報と③業務プロセスの「標準化」が達成されていなければ話が進まない。それをF-LINEでは準備段階から1つずつ実践し、乗り越えてきたんですね。

この物流共同化を含め、「嫌われないための具体策」としては、筆者が「物流2024年問題の解決策」として挙げた項目に尽きるので繰り返しませんが、先の国交省の手引きでは「ドライバーの労働時間短縮に向けた対策」として以下をシンプルに挙げているので、紹介しておきます。

<アプローチ①>

「運転」の時間短縮…中継輸送の実施/輸送ネットワーク再編でドライバー1人当たりの運転時間を短縮する。

<アプローチ②>

「荷役」「付帯作業」「待ち」の時間を短縮…パレット化・機械化で荷役短縮/事前出荷情報(ASN)発信で付帯作業短縮/バース予約システムで待ち時間短縮

…もしまだ何の対策も打てていないのなら、社内ですぐできることから手を付け、社内他拠点との連携、そして他社との連携・共同へと、一歩ずつコマを進めていくことだと思います。

ビール・飲料業界は「ライバルと協働」の先覚者

加工食品業界に勝るとも劣らず早い時期から、同業他社との物流共同化を進めてきたのが、ビール・飲料業界なんです。筆者はつい先日、アサヒグループ幹部として長年にわたりビール業界の物流共同化のリーダー役を務めてきたお2人(現・アサヒロジの児玉社長さん、島崎副社長さん)と対談ウェビナーを実施したところで、これまで10年間の取り組みと最新の動きについて詳しく話を聞きました。資料引用の許可もいただいたので数点紹介します。

①同業ライバル社との共同配送

図表4は2011年スタートという最も早い時期からの取り組みで、アサヒ、キリン、サッポロ(サッポロは2015年から参加)の3社が今に至るまで継続実施している、首都圏での小型車による共同配送の事例です。各社が保有する配送センターを相互利用し、それぞれ近い得意先まで3社の商品を混載して運びます。でもフツーなら、店頭でもCMでもし烈な販売合戦を繰り返しているライバル会社に、販売量は知られたくないんじゃないですか?…と児玉さんに聞いてみたんですが、「いやいや、数量も大したことないし、みんな気にしてませんよ」とのこと。なるほど~でした。

図表4 同業ライバル社との首都圏小型車共同配送

図表4 同業ライバル社との首都圏小型車共同配送

Copyright © ASAHI BREWERIES,LTD.All rights reserved

②飲料と即席麺の物流シェアリング・共同モーダルシフト

次に図表5はちょっと面白い物流シェアリング事例で、「重・軽混載」かつ「共同船舶輸送」のモーダルシフトを同時実現したもの。飲料は重いので、荷重一杯載せてもトラック荷台には空きが出てしまいます。そこで飲料製品(900×1100mmパレット積み)は若干控えめにし、空きスペースに軽い即席麺製品(1000×1200mmパレット積み)を混載し、積載率を最大化(図の下側)。異なる規格のパレットをうまく積み合わせる工夫と、2段積みできるよう一部の即席麺パレット高さを調整するのに苦心したそうです。さらに、関東~九州間の幹線輸送は海上輸送(週1~2便)にモーダルシフトすることで、車両台数を20%削減。その分の排出CO2量の削減にも成功したのです。

このように物流共同化・積み合わせで積載率を上げる(トラック便数削減につながる)効果と同時に、その幹線輸送をモーダルシフトすることで、相乗的にCO2削減効果を高める、という手法は、これからの「物流共同化の王道」だと、筆者は高く評価しあちこちで推奨しています。

図表5 異業種連携/飲料と即席麺の物流シェアリング・共同運航モーダルシフト

図表5 異業種連携/飲料と即席麺の物流シェアリング・共同運航モーダルシフト

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③新たな幹線輸送スキーム構築

もう一つご紹介するのは、以前の講演でも触れたかと思いますが、日野自動車の子会社、NEXT Logistics Japanにアサヒが主要荷主として参画・出資し、幹線輸送の共同プラットフォーム構築に挑んでいる事例です。関東・関西間の幹線輸送をダブル連結トラックで共同化したうえ、それぞれが中部で折り返す「中継輸送」を実現。その後参加企業はさらに拡大し、図表6のように幅広い荷主と物流企業、ICT企業まで業種・業態を超えた連携の輪が広がっています。

これによりドライバー1人が当面は約3台分、ダブル連結トラックの隊列走行が実現すれば6台分を日帰りで運べるようにして、「物流2024年問題」のクリアを目指します。同時にその分、排出CO2を削減しグリーン物流にも資するという、理想的な姿を志向しています(水素電池トラック=FCV開発にも挑戦中)。

筆者はこの取り組みが、公的な物流オープン共同プラットフォームへと成長し、「フィジカルインターネット(PI)」のひな型になれる可能性がある、とみて、数年前からあらゆる機会に紹介し拡大を応援する「勝手推し」をしてきました。すごすぎるPI構想の実現性を疑う声も残る中、今回の対談でアサヒさんと「夢の実現に向かって諦めず、前に進もう」と意気投合できたのは、とても嬉しいことでした。

図表6 NEXT Logistics Japan の幹線物流協働プラットフォーム 

図表6 NEXT Logistics Japan の幹線物流協働プラットフォーム 

…以上、今回は「嫌われる食品物流」の呪縛をブチ切ろうと、努力を続ける加工食品とビール・飲料業界のチャレンジを紹介しました。次回は③冷凍食品物流と④食品通販をテーマに、最近の動きに迫りたいと思います。

バックナンバー

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3 脱炭素・デジタル時代の物流ビジョン Part① 「スーパーシティ」の物流像とSDGs
4 脱炭素・デジタル時代の物流ビジョン Part②再エネ供給の爆速拡大から始めよう!
5 “物流DX”って… フツーの”DX”と違うんですか? 新・総合物流施策大綱のざんねん項目と今後への期待
6 物流脱炭素化へ “モーダルシフト”に新たな戦略的価値 ~共同物流との合わせ技/海運活用でBCP~
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8 EXで脱炭素物流、そして「国家安全保障」へ Part② Energy Transformationのトンデモ革命的価値を検証する!!

執筆者 菊田 一郎 氏 ご紹介

執筆者 菊田 一郎 氏 ご紹介

エルテックラボ L-Tech Lab
代表 菊田 一郎 氏

1982年、名古屋大学経済学部卒業。83年流通研究社入社、90年より月刊「マテリアルフロー」編集長、2017年より代表取締役社長。2012年より「アジア・シームレス物流フォーラム」企画・実行統括。著書に「先進事例に学ぶ ロジスティクスが会社を変える」(白桃書房、共著)、「物流センターシステム事例集Ⅰ~Ⅵ」(流通研究社)、ビジネス・キャリア検定試験標準テキスト「ロジスティクス・オペレーション3級」(中央職業能力開発協会、11年・17年改訂版、共著)など。2017年より大田花き㈱ 社外取締役(現任)。2020年6月1日に独立、L-Tech Lab(エルテックラボ、物流テック研究室)代表として著述、取材、講演、アドバイザリー業務を軸に活動開始。同6月より㈱日本海事新聞社顧問、同後期より流通経済大学非常勤講師。

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